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穴だらけのルールしか用意されていないゲームに参加したのは俺達だ。参加者想いの内容で無くても、せめて主催者と参加者が対等な関係であれば救いだ。
だが、このゲームは主催者側の殺戮であって、参加者側の娯楽では無さそうだ。
死神ネルガルの異常な設定は人為的な悪を感じる。少なくとも脅威である認識阻害率の高さからは、ゲーム性を担保する程の愛を感じない。バグ紛いの設定だ。
しかし、俺達は楽しむ為に飛び込んだわけではない。手厳しい追っ手から身を隠したいという点もあったが……
「さて、捜すとなると厄介だな」
「遊び方も知らんのか貴様は。それとも鬼を自分から追いかけるタイプの人間だったか?」
何を言い出すかと思えば。確かに幼い頃は、隠れながら鬼を追跡するタイプの人間であったが、今は過去の俺の話をするときではない。
「さて、リシャミーは鬼側かな。それとも逃げる側なのか」
「あいつの司会はもう終わっているだろ?治癒屋、何か狙いがあるのか?」
「まあな。『狙い』と言っても確認したい程度の事だけどな。俺の予想ではリシャミーは、このゲームに参加している。参加者として存在していなくても、潜り込んでいる可能性は高い」
そう。リシャミーが何らかの目的をもってこの『かくれんぼ』のフィールド上にいると俺は予想していた。
もし、俺の仮定が正しいとして、この場に姿を現さないとなると、幾つかの要因が考えられる。
一つ目は『死神ネルガルに遭遇している、もしくは遭遇しないように隠れている』だ。この場合は、文字通りリシャミーと遭遇しない限り逢えないだろう。
そして、二つ目は『俺達に遇いたくない』だ。この場合は隠れている可能性が高い。しかも、俺達に気づかれずに隠れ続けるには、比較的近くにいつつ隠れながら様子を窺っている戦法を選んでいてもおかしくはない。
鬼の背後を追いかける昔の俺みたいにな。
まずは、簡単に確認できる方から試してみるか。
「ハイカカオ……今から少し危ない真似をするが許してくれるか?」
「ふん……好きにしろ」
ハイカカオも何かを察してくれたのか、今回は罵倒されずに済んだ。
「じゃあ、遠慮なく」
俺は大きく息を吸い込んだ。そして、吐き出す。
「リシャミーぃいい!!好きだぁあああ゛あ゛!!!」
殺戮ゲームの中心で愛を叫んでみた。声高らかに。普段、大きな声を出す習慣が無いため、語尾が裏返ってしまった。
だが、俺の撒き餌にまんまと引っ掛かり、鯛が釣れた。
「らららライくんっ!!い、今の本当なの?!!」
物陰から、ヒョコリとリシャミーが1体現れた。
こうも簡単に引っ掛かるとは思わなかったが、やはり俺のヨミは見事に当たった形となった。
「リシャミー、みいつけたっと」
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