第34話 領域外フリーフィールド

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【お願い】  必死に訴えかけるリシャミー。涙目のまま俺の腕を優しく掴んでは離さない。 「いやぁ、俺の質問を反古したしなぁ……」  焦らす。簡単に思い通りにはさせないぞ。リシャミーは明らかに俺達に隠している事がある。それを聞き出さない限り、前へ進めない気がする。  しかしまぁ、頑張ってフリップを書いている姿も絵になるなっと感心してしまった。その場でペタン座りをして、あれこれ悩みながら書いている様子は見ていて飽きない。  そして完成したフリップを握り締めて何度も俺のもとにやってきてはトライを試みている。  今回は自信ありげだ。どれどれ、次は何を書いてきたのか見てあげようではないか。  フリップにはこう書かれていた。 【大好きな、ライくんへ リシャミー】  と大きく書かれたフリップが。  いやいや、今更ながらリシャミーのサインで釣られる程のミーハーではありませんが?しかし、彼女は自信があったのだろう。可愛いドヤ顔を見せながらフリップを渡そうとツンツンしてくるではありませんか。 『ほれほれ~欲しいでしょ?』  サイン1つで強気に攻めれると決断したリシャミーの素朴さに心撃たれそうになったが、とりあえず受け取り拒否をしてみた。  するとリシャミーはショックを受けているではありませんか。  普段は多くのファンからサイン攻めに遭っている彼女からすれば、自ら進んでサインを書いたのに受け取ってくれなかったのは俺が初めてなのだろう。  なんとかして、俺に受け取ってもらおうと俺の手にフリップを握らせようとしていた。  対して、俺は手を上に上げてみる。リシャミーの身長では届かない位置に。 「ははははは。届くまい」  それでも、なんとかして手に渡そうとするリシャミー。  この時、悲劇は始まった。いや、とある事に気づいてしまったんだ……  リシャミーの柔らかい胸が俺に時折当たっていることに。  ピョンピョンとジャンプする度に、俺の身体に当たっているではありませんか。  これはまずい……。だが、今更止めようにも完全に引き際を失ってしまう俺。  すまん。もう止めてくれ。  リシャミーは着痩せするタイプだったのだなとここで気づいてしまう。リコを引き合いに出すのは最低なのだが、リコよりもやや大きいように感じる。俺の鑑定スキルが勝手に判定しやがる、くそぅ……  やっと諦めてくれたようで、またその場にペタンと座り、フリップとにらめっこを始める。  そして、安堵した俺に対し、再度試練が訪れる。この位置からは、リシャミーの胸をちょうど覗き込むような位置になっていて、書く度に、服から胸がチラチラと見えてしまう事に。 『ま、まさか。リシャミーはハニートラップで俺を倒そうとしているのか?!』  しかし、リシャミーは必死に考えている。 『止めろ、止めてくれ!!』  俺の心の叫びなど届く筈もない。またリシャミーは書けるなり、すぐに俺に渡そうとくっついてくる。  そして、また当たる。
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