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「さっきの話本当か?」
「うん。まだ、正確には分析できていないけどね。ある程度の事は調べてあるから安心して」
後方支援としてハイカカオに担当してもらっている。死神ネルガルといえど、ハイカカオが新設したルールは従ってもらう。
進入禁止の標識は、たとえ姿を見せない相手であっても有効だ。標識を破壊しようものならすぐに俺達が攻撃を仕掛ける。
リシャミーの調べでは、死神ネルガルは弱っているプレイヤーから狙っているようだ。死神ネルガルはBOSS級とはいえ、他のBOSSに比べ攻撃力はやや劣る。その為、一撃でプレイヤーを刈れるライフ量に下がるまで、取り巻きのモンスターに攻撃させているとのこと。
「つまり、取り巻きの下級モンスターがプレイヤーを襲っているときは要注意って事だな?」
「うん。そのとおり、でも本当にいいの?!BOSS退治に協力してもらって」
「あぁ、俺達はバグを調べることだ。リシャミーがこれまで調べた中から、俺や日本政府側に伝えてもいい情報を教えてくれたらそれでいいさ」
そう。バグの全容を掴むのは秋山サイドの仕事だ。俺の仕事は医院を運営するだけのこと。今回もテローゼに留守番を任せてあるからたぶん大丈夫だ。
……たぶんな。
こうして、後衛にハイカカオ、中衛にリシャミー、治癒師の俺が前衛を務めることとなった。
「ライくん、そう言えばお医者さん嫌いになったって噂本当なの?」
「どんな噂だよ。……まぁ、間違ってはいないかな」
ファラオの包帯の加護のせいで、回復魔法を受け付けないマミーになっている。自分に回復魔法を唱えれば、たちまちライフゲージが溶けてしまう。
「治癒が嫌いな治癒師って致命的じゃないの?!猫アレルギーの動物病院みたいなものじゃない」
ははは、確かに。悪くない例えだな。
「さて……お喋りはまた今度な、リシャミー。いるぞ、近くにプレイヤーが」
俺はリシャミーの頭を撫でて静かにするように促した。体勢を低くし、俺達は壁の向こうから様子を伺った。
「居るのか、BOSSが」
「いや……まだ確認はできない」
襲われるプレイヤーは単独のようだ。ケラケラと笑うゴーストタイプのモンスターに苦戦しているようだ。
魔法系ジョブの身なりをしており、ゴーストタイプのモンスターとは相性はいい筈だ。それにも関わらず、攻撃できない様子を見るに、詠唱をする隙を与えてもらえないのだろう。代わる代わるモンスターが彼に攻撃をしており、連携は見事だ。
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