第34話 領域外フリーフィールド

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「後は、狙われるタイミングさえ掴めれば……」  助けに行くにしてもタイミングが重要となる。早く行けば、死神ネルガルの姿を確認出来ないままになり、俺達の奇襲が無駄になる。  かと言って、まごまごしていれば、彼の首は一瞬にして吹き飛んでしまう。チート紛いのmodにより死神ネルガルは姿を確認することが出来ない。  殺意の表れである『攻撃』にシフトする瞬間だけ見える魔物を捉えるのは至難の技だ。 「……わかったよ。あとモンスターに5回攻撃されたら、死神ネルガルが狙うよ、ライくん」 「なっ……もしかして」 「うん。モンスターのアルゴリズムと、プレイヤーの回避率と守備力を加味すると、あと5手で彼のライゲージが緑色から黄色に変わる。彼の守備力なら黄色ゾーンに入れば死神ネルガルの攻撃で一撃だよ」  恐れ入った。行動パターンだけでなく、この状況の全てを計算し、予測に到ったというのか。情報を処理し演算するスピードは桁違いだ。  これは人間技じゃない。高知能AIであるリシャミーだからこそ導き出せる代物だ。 「『5』……そして連撃で3発、『4』『3』『2』……最後にあの紫色がかったゴーストモンスターのアタックの後に……」  リシャミーの完璧な合図を信じ俺は飛び出した。次は俺の番だ。ファラオ戦で獲た技術を余すことなく活用する時が来たようだ。  プレイヤーの背後に突如表れた死神ネルガル。ライフゲージが3本と、他のBOSSに比べて圧倒的に少ない。が、イオマンテをも凌ぐステルススキルがその弱さを全て補っている。  振りかざされた鎌が怪しく光る。  古代詠唱により、俺はノータイムでシールドを発動した。  プレイヤーの左肩付近に。  鎌の速度より俺の発動速度が勝さる瞬間が高い金属音を奏でた。  弾き返された反動により死神ネルガルの体勢が大きく崩れた。 「ハイカカオ!!」 「うるさい、バトンパスだな」  ヤレヤレと呆れながらも、ハイカカオは指を鳴らし標識を設置した。  凄まじい風の刃が死神ネルガルの首を狙う。死神ネルガルは間一髪のところで回避したが、代償としてライフゲージを大きく損傷している。  死神ネルガルは、突如現れた物を睨み付ける。そこには【横風注意】と記載された道路標識があった。 「ちっ……仕留め損ねたか」  ハイカカオも一撃で死神ネルガルの首をはねるつもりでいた。俺やリシャミー、そしてハイカカオの3人は魔法系による攻撃をあまり得意としていない。むしろ、物理に特化している。  だからこそ、今の一撃で決着をつけるべきであった。  今後は死神ネルガルに認識されながら闘う事になる。 「引き締めろよ、治癒屋。もう隙は見せてはくれないぞ?」  
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