第34話 領域外フリーフィールド

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 不意打ちは見事に成功はしたが、手放しで喜べる状況ではなかった。助けた魔法系のプレイヤーは一命を取り留めたが、肝心な死神の姿は見えない。  そればかりか、近くから悲鳴がフィールド内から次々に聞こえてきた。  駆け寄ると、首元を損傷しているが、死亡までには至っていない負傷者がゴロゴロした。  命を狙われた死神ネルガルは、作戦を変えたようだ。一撃で仕留められなくても、攻撃をしては消え、その場には留まらず、次のプレイヤーを襲う。そうすれば、時間はかかるが、確実に仕留められると踏んだのだろう。 「野郎……許さねぇ」  ハイカカオも先程狙われた。ハイカカオの反応速度が異常に早いため、緊急回避をした結果、首ではなく太股の傷だけで済んだ。  ライフゲージそのものは俺の回復魔法で事なきを得たが、傷口までは完全に回復することはなかった。特殊な鎌を使っているようで、ハイカカオの俊敏さは奪われてしまった。 「安心しろ、戻れば治してやるから」  しかし、ハイカカオは俺の言葉など耳に入っていなかった。死神ネルガルに対する憎悪だけで動いているのがわかる。 「ライくん……」 「あぁ、わかっている」  そう。わからないことがわかっている。ここまで無差別に狙われるのは想定外だった。多くのライフゲージを奇襲により失った死神ネルガルからすれば、俺達を殺そうと頭に血が上り、行動をもっと限定的になると思っていた。  だが、実際は真逆だった。ライフゲージをこれ以上失わぬよう、ハイディングを駆使したヒット&アウェイを徹底している。  戦闘に長けたハイカカオでさえ、死神の神がかった攻撃パターンを攻略できずに重傷を負った。 「これ以上長引いてもジリ貧だ。むしろ、相手の勝率を上げるだけになる。リシャミー、俺の言っている意味……わかるよな?」 「?」 「……任せたぞ?」  俺はリシャミーとハイカカオを残し、負傷者の手当てを優先した。 「……あいつは馬鹿か。全速力で移動したら無防備じゃないか。『殺してくれ』と叫んでいるのと変わり無い」 「違うよ、ハイカカオくん」 「貴様に名前を呼ばれると虫酸が走る。それに何が違うのだ」 「ライくんは……敢えて時間を稼ごうとしている」
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