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「ルートについては未発表だから探索も兼ねているからな?それと、使用制限についてはバフ系のアイテムくらいで……」
静まりかえった院内。作戦会議するには十分過ぎる環境であり、持っていくアイテムを態々具現化しては綺麗に並べ始めた俺。
院内に居座りついているテローゼは、お化け仲間に呼び出さたらしく「行キタクナイ」と愚痴を溢しながらもフワフワと消えていき、リシャミーは司会業に駆り出されて出勤。
大好きなソネルはリアルが忙しいらしく、今はログインしていなかった。
「ねぇ、院長。そんなにアイテム拡げてたら片付けるのに時間がかかって、出発するころにはイベント参加の申し込み終わってるんじゃない?フリマの出店みたいになってるよ」
飽きれ口調で俺を罵ってくれる、二刀流バーサーカーの姫。
「問題無し。リコが来てくれた時点でクエストは半分以上成功したようなものだからな!!勝利の余韻を今から味わいたくて柄になくアイテム整理を始めてるってわけさ」
「出発する前からわくわくしてるだなんて、修学旅行生の前日準備みたいだね」
「そうか?俺は、当時はわくわくしなかったけどな」
「ふふふ、院長は単独プレイだもんね」
嬉しそうに罵りやがって。でも、リコの言うとおり修学旅行当日の自由行動は、単独行動していたっけ。
【市内の歴史を調べろ】という教師側の指示のもと、他のクラスメイトは公設の歴史資料館みたいなダンジョン散策をしてる中、俺は独りで登山道に入り込み、山頂から見える風景の写真を当日の成果として提出して、担任から無茶苦茶怒られたっけ。
遭難したらどうするんだ!っとか散々怒られたが、ハッキリ言って理不尽だなと思って聞き流していた。
登山道の入り口ほど、わくわくするゲートは存在しない。車が行き交うアスファルトとは違い、神秘的な空間はまるでゲームの世界のようだった。
それに、地形を把握することは、その地の歴史を知ることに直結するではないか。
「今日は頼もしいアタッカー様がいるから大丈夫さ」
「アタッカーがご所望なら、最近知り合った『あの娘』誘えば良かったじゃない。綺麗だし、剣技凄いし」
「ん?……あぁ、アリスの事か?アリスは今回のようなイベントは不向きだ。アイツはまだ真面目過ぎてつまらない。それにムートに借りを作るみたいで後々面倒な事になりそうだからな」
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