第35話 枯樹生華

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「じゃあ、私は残り者ってわけ?」  いつになく突っかかってくるリコ。ソネルも少し心配していたが、確かにいつもより機嫌は宜しくないようだ。 「あのな、リコ。俺が適当に選んだと思うのかよ?」 「う~ん、そこまでとは……ひゃえ?!な、何?!」  俺は両手でリコの肩をしっかりと掴む。 「俺の眼をみてくれ」 「あああ、あの……急には見れないよ」 「駄目だ。そらさないで見てくれ」 「……はい」  リコはゆっくりと眼を合わせてくれた。澄んだ瞳に潤いが増しており、もう少しで溢れだしそうで拭いたくなる。 「今までで一番2人でクエストに参加したのは誰だ?」 「い、院長です」 「リコの命を護れるプレイヤーは?」 「い……院長です」  ……ん?良く見るとリコの眼はグルグルと回っており、微混乱を表す状態異常が表示されていた。  知らなかった。状態異常は街内の安全地帯では発生しないという認識だったのだが、微混乱は、特殊な条件下ではどうやら発生するようだな。  ちょっと意地悪してみようかな。 「リコ、ちょっとバンザイしながら背伸びして」 「はい……」  無駄に背伸びをさせてみた。端から見ればクエスト前の準備体操をしているようにも見えなくはない。  が、ハッキリ言って無駄である。ゲームの世界でストレッチを数回した程度で俊敏性が目に見えて上昇する筈がない。  もし仮にそんな効果があるのならば、みんな入念に(こぞ)って体操し始めるだろう。そして、クエスト会場前では太極拳をする団体並みに皆同じ動きで身体を解すだろう。  さて、俺はリコに太極拳をさせたいわけではない。バンザイをしながら背伸びをすることで、普段見えない『あるモノ』が見えてしまう事を俺は知ってしまったのだ。  着目せよっ!!リコのすそ辺りを!!  ……見えたっ!!  普段見えることのない、リコのおへそがチラリと姿を現した。  控えめに言って可愛すぎる。普段ならお願いしても絶対に見せてくれない『おへそ』をこの眼で捉えることに成功した。  バンザイしながら背伸びをすればおへそが見える仕様だと気づいたのは偶然だった。  先日、リシャミーが『ライくんのお手伝いのリベンジさせてほしいの』と鼻息を荒くしながらお願いされた。  また椅子に乗られたら倒れこまれても困るので、椅子を使わずに取れる範囲の高さの物をお願いしてみた。  しかし、リシャミーは俺より身長が低い為、背伸びをしてもギリギリ届くか届かないかの微妙な高さだった。  その時だ。俺に悪魔が囁いたのは。  必死に取ろうと奮闘してるリシャミーの背中が見えてしまった。  イコールっ!背中の向こう側にはおへそも見えているに違いないという事実に。  俺の予想通り、リコで試してみたら、可愛いおへそが見える結果を拍手でお出迎えできる形となる。  普段なら絶対に気づかないようなギミックを導入している運営側よ。一言いわせてくれ。  あんたら控えめに言って最高だよ。  
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