第35話 枯樹生華

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 人の()が有るかは知らないが、俺達が今いる場所は自然に囲まれた新しいステージだった。  夜にも関わらず足元から空へ向かって明るいのは竹林を照らす照明 の影響だろう。普段は上から照らされていたが、下なら光を浴びるのは凄く新鮮な体験だ。  俺達の周りには敵意を向けてきているモンスターは居ないようだ。竹林を遊びながら飛び回る兎が数匹いるが、ただのオブジェクトだろう。  下から照らされている俺達の認識阻害率(ハイディング)はともに1桁台。それにも関わらずモンスターから襲われないことを鑑みるに、俺達がいるこのスタートラインは完全安置。  そして、その仮定が正しいとすれば、比例するようにして不安材料が浮かび上がってくる。 【安置から離れた瞬間、モンスターとの闘いがすぐに始まりかねない】という最悪なケースが待ち受けている事を表していることに。 「さて、Dr.徳永よ。本日は護衛という認識で良かったのかな?」 「護衛って……鬼が出るか蛇が出るかの状況で、そんな頼もしい事をさらりと言ってくれるじゃないか。護衛なんて言わず、別にBOSSが出たら狩ってくれても構わないからな。俺の目的はラストアタックボーナスでは無い」 「へぇ~。院長、今日はお宝さん目当てじゃないって事?」 「あぁ。今回はちょっとワケありでな……」 「うむ。では聞かせてもらっても宜しいかな?」  認識阻害率は悪くても、安置であるこのスタート地点は話し込むには丁度いい環境だ。2人には知らせていなかったアメリカのサーバーへコンバートしたことや、バグの事など話せる範囲で共有しておいた。併せて、俺の考察も余すことなく順序を追って説明した。 「ふむ……では、今回のクエストでも、バグの可能性を含んでおるわけじゃな?」 「あぁ、その通り。バグの根源はまだ掴めていないが、アリスの件も含めて、日本のこのサーバーでも発生している。そして今回もバグだと俺は睨んでいる。だから、蒼の一撃であるグデンファーと、俺が一番信頼のおけるアタッカー様の2人に声をかけたってわけさ」
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