第35話 枯樹生華

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(6) 「ふぃ~。だいぶ探索できたね。大漁ぅ、たいりょ~!!」  満足そうにその場でペタンと座り込むリコ。「クエスト中に休憩だなんて不謹慎だぞ?」と叱ってもいい場面だったが、今回は諦めた。  何故なら、リコの気持ちも痛いほどわかるからだ。 「だな、俺も休憩。頭働かせつつ、BOSSやバグの警戒をず~~~っとしてりゃ、座らないとやってられないよな。グデンファー(たいしょう)、生2つ持ってきて~』  もし、仕事帰りに居酒屋へ寄っていれば、こんな流れで注文しちゃうんだろうな。 「うむ。これほど探索してもバグの正体だけでなく、BOSSにも遭遇できないとはのぅ」  流石のグデンファーも少し弱音を吐いていた。ターゲットさえ現れてくれれば、2人の剣技で事は直ぐにでも終了となるのだが、今はそれが叶わぬまま、無情にも時だけが過ぎていった。  気がつけば、2000組いた参加者も、今現時点で残存しているギルドは86組まで激減していた。 「まだ見ぬBOSS様を倒さないとリコが見つけたお宝が没収されちゃうからな」 「……ぅん?!」 「あれ?言ってなかったっけ?今回のクエストで得た装備系アイテムは『仮入手扱い』だから、まだ持って帰ることはできない仕様を採用しているならな」 「うそっ?!」 「安心しろ。消耗系アイテムならBOSSを倒す前でもお持ち帰りできるからな」 「何が『お持ち帰りできますよ』よ!!飲食店みたいな事言っちゃって。私が手に入れたのは、装備品ばかりだったのちゃんと見ていたじゃない!」  慰めたつもりが、余計にリコを怒らせてしまったようだ。  リコが手にした防具はどれも守備力がトップクラスの入手困難な物ばかり。加えて、耐火属性も若干ではあるがプラスでついているレア物。手放すとなれば精神的ダメージもあるだろう。 「ワシも駆け出しの頃は血眼になって戦利品を求めていたのう。さて、お主等よ。士気をあげるには状況を変えることもまた必要じゃ。一旦休憩などしてはいかがかのぅ?」  なるほどな。グデンファーの言うことも一理ある。ログアウトして情報収集や分析に徹するのもわるくない。  流石、蒼の一撃のレジェンドだ。事の運び方を熟知している。 「じゃあ、まずは休憩といこうか」  俺達は集合時間を決めたあと、一時解散した。
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