第35話 枯樹生華

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(7) 「んぁ~~。さてさて、どうやって回収できるかなぁ」  ゲームから目覚めると大きな欠伸がでちゃう私。手に入りつつあるお宝の回収を前に小休止になった。  クエストの途中で休憩できるのは本当に助かる。また気合いを入れ直すきっかけにもなるし、何よりフレッシュな気持ちで闘いのリズムを創りやすい。  私は現実世界に帰ってきてもゲームの世界の事で頭がいっぱいだ。次に院長達と再会するころには、良い策を考えてくれていることに違いない。だから私は、今はゆっくりと羽を休めて来るべき闘いに備えよう。 「さぁ、いざ参ろうか」  私は詰め寄る。俊足の移動術である虎哮(ここう)を現実世界でも発動し、ノータイムで取っ手に手を掛ける。  引き出すとそこには、冷えたお宝が隠されていた。  勢いよく包装を剥ぎ取り、両手に装備する。左に茶色を、右手に白色をっ!!  時間制限つきの装備品の属性はどちらかと言えば氷属性。溶ければ効果を失ういわば諸刃の剣。  をパクりっ。 「ん゛~!!冷たくて美味しいっ!」  チョコアイスとミルクアイスを交互に食べながら至福の時間を過ごしているときに、スマホから不幸のレクイエムが流れ出す。  着信の主はおかぁさんだった。コールを受けるかどうか一瞬迷った。呼び出しの内容であれば、院長達との待ち合わせの時間に間に合わなくなるからだ。  それに、今は展覧会を迎える為の準備の真っ最中。おかぁさんは展覧会の事で頭がいっぱいでイライラしている筈。そんな状態で、展覧会の部外者である私にわざわざコールしてくるのは、良くない内容である可能性が極めて高い。  だけど、そのまま無視するだなんて選択をする勇気も出来なかった私…… 「何?おかぁさん」 「あ、あんたどういうつもりなの?」 「電話いっぱいくれてたの?ごめんなさい」 「そんなことを聞いてるんじゃないの!!」  おかぁさんは凄い口調で電話越しに怒ってきた。イライラしているのはわかるが、怒り方が異常だ。  何か、私がとんでもない失敗を犯しているのだろうと推測したが思い当たる節がない。あるとすれば、おばぁちゃんから展覧会に出さないかと誘われた事を誤魔化したぐらいだけど、私はそもそも作品を創るだなんて立場にいないし、創る気もない。勿論、首だけのマネキンを置くだなんて冗談を実行することもしない。  だから問いただした。 「何か、あったの?おかぁさん」
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