第35話 枯樹生華

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 肩慣らしに虎刈りをしていたグデンファーでさえ、BOSSの姿を見ていないとなると、BOSSの認識阻害率(ハイディング)がやたら高いBOSSということになるだろう。 「はぁ……」  ここ最近、見えない敵と戦ってばかりで気が滅入る。そろそろガチの戦闘がしたい。デスナーガとかファラオのときのような純粋な戦闘で挑みたいところだ。  イオマンテのように気配を消す系の攻略はとても難しく、消えている状態がデフォのBOSSはこちらから願い下げである。探るだけで骨が折れるどころか、複雑骨折級に修復不可能だ。  死神ネルガルみたいに「あ、自分陰キャラなんで攻撃意外は空気なんで」みたいな奴が来たら今すぐ治癒師やめて除霊師にジョブ変してやろうか、とさえ思う程だ。  今思えば、テローゼも然り、ファラオもお化け系のBOSSだった。もしかしたら、俺はゴーストやゾンビ、アンデッド系を従える素質があるのかもしれない。  もしそうであれば、俺は医院を閉めてお化け屋敷でも開業してやろうかな。  頼むから、生身のモンスター来てくれ。バグなんて俺等がなんとかするんで。  ま、なんとかするのは剣技()えーでお馴染みの2人様に任せちゃうけどな。  そんなくだらない事を考えれちゃう程、俺は暇だった。 「なぁ、グデンファー。あんたが狩りすぎてモンスター枯渇したんじゃ?」 「そんな事は無かろう。例えそうであっても少なくともBOSSはおるじゃろ」  それはそうなんだが。 (いたか?!) (いや……)  俺達が探索しているときに違うプレイヤーの声が聞こえてきた。どうやら、リコもグデンファーもまだ気づいていないようだ。俺は2人をすぐに身を屈むよう指示し、遇わないように心掛けた。 「BOSSか?Dr.徳永よ」 「(ちげ)ぇーよ。プレイヤーだ」 「確かに。お主、やたら聴覚スキルが高いようじゃのう」 「そりゃどーも。俺みたいな非力組は生きることに必死なんだよ」 「ねぇ、院長。あの人達にBOSSの聞き込みしたらいいんじゃないの?」  リコがさも当然かのように聞いてきた。 「あのなぁ……。プレイヤー全員がリコみたいに人懐っこい奴とは限らない。クエスト中は特に本心がでる。BOSSを倒す為ならプレイヤーキルを平気でしてくる輩の方がむしろ多数派なんだぞ?」 「そうだとしたら斬っちゃえばいいんじゃない?!」  ……お? 「左様。眼には眼を。攻撃には剣をじゃな」  ……おぉ?!  もしかして、和平的な考えは俺だけっすか?バーサーカー様に片腕で妖剣のような独特の剣を振り回す恰幅の良いじいさんは、猟奇的で大変頼もしい限りです。
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