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「ライさん……いいですか?」
「ん?改まってどうした?」
「例えば……なんですが、今プレイヤーとモンスターが闘っているとして、途中から私たちが助太刀した場合のクリア報酬はどうなるかは御存知……ですか?」
「お?!なかなか興味深い質問だな。実はその行為について、ゲーム市場内ではよく議論の対象になっているんだ。【乗っかり】って言ってな、プレイヤーレベルが低い者のレベルを効率良く上げたりするために屡々用いられる」
「そうなんですね……でも、その【乗っかり】がなぜ議論の対象になるの……ですか?」
ソネルは頭の上に大きな疑問符が現れているかのように質問してきた。
「【乗っかり】には大きな利益を生むからだよ。例えば、弱いプレイヤーがいたとして、明らかに自分の実力ではbossに勝てないと思った場合、強いプレイヤーの人にお金を払って、bossのライフゲージを削ってもらうとする。
そして、あと一撃で倒せそうな状態になってから、依頼主である弱いプレイヤーが参戦してとどめを指す。
するとラストアタックボーナスとクエストがクリア出来ちゃうって構図が成立しちゃうんだよ」
「それって、少しズルい気が……します」
少し俯いたソネルの頭をぽんぽんと触る俺。
「そう。ソネルの今思ったとおりさ。これは『お金』さえあれば、ゲームの内容をすっ飛ばして強くなれる。
だが、このゲームの運営サイドは面白い対策をしたんだ」
「面白い……対策?」
「クエストクリア系のバトルの場合、bossのライフゲージを半数以上削ったあとに、当初からはいなかったプレイヤーが途中から参戦した場合、新しいbossの個体が乱入するようになっているんだ。しかも、乱入してきたbossの討伐も必須事項となる」
「つまり、途中から参戦した場合、当初から闘うよりも厳しい状態が待っているっていう事……ですね」
「そのとーり。全てがその通りになるって保証もないけど、とりあえず『お金』でゲーム上の旨味を買えちゃうようなズルいシステムは通用しないってこと。
だから近くで爆発音しても無視するほうがいいのさ。無闇に手出しちゃうと、他プレイヤーが邪魔してきたと勘違いされ顰蹙を買うことになりかねない。ここは関与しないほうが吉さ」
俺はそう言って、アリマジロに草むらへ隠れるように指示をした。状況を察したようで、ゆっくりと転がりながら移動してくれた。
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