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代表して俺が近づく形となった。俺が声をかけるまで何故か上ばかりを警戒していた2人。
「やぁ……えっと、その……なんだ。捗っているかい?」
クエストの真っ最中に知らない相手に声をかけるのって熟慣れない俺。治癒師としてクエスト参加に誘われていた事も前まではあったのだが、ここ最近は知り合いと参加しているか、もしくは秋山の無茶振りで強制的に、仕事的に、無理矢理させられていたぐらいだ。
こんな今みたいな状況で、野良ギルドに声をかけるだなんて凄く緊張して、何から話しかけていいかわからない。
いきなり、
「あの~良かったら私が作った回復薬β使用されます?疲れた身体に効きますよ~」
だなんて営業口調で近寄れば皆警戒するに決まっている。そんな馬鹿げた行為はどこかの大型ショッピングモールのエレベーター付近にいる怪しい水を笑顔で売っている奴等に任せておけばいい。
「ひ、ひぃ!ななな何だよお前ぇ」
2人いたうちの1人が武器を握りしめていた。それを見た仲間が血相を変えた。
「おぃ!馬鹿っ、しまえ」
いやいや、何もそこまで怒鳴りながら催促しなくても大丈夫だぞ?俺は剣を向けられたくらいでキレたりしない。リコやグデンファーとは違い、治癒師の俺は温厚なんでね。
剣を高らかにあげて構えている者に対し、俺は怒りをぶつけることをしなかった。これからBOSSの情報を教えてもらう重要なキーパーソンだ。この出逢いを大切にしないといつまでたってもBOSSに遇えない。
そんな気がしていた俺の視界が突如光に包まれ真っ白になった。
似ていた。
光りに包まれる光景。このフィールドにやって来たときの竹林のよう。あれは下から上へと光が移動していたが、今回は逆だったよな……
思考が光だと認識した次の瞬間、けたたましい破裂音が一回鳴り響いた。
大空から何かが落ちたような……いや、何かが砕けるような音。
それが落雷だと気づいたのは、音が発生してから僅か数秒後の事であった。先程まで武器を構えていたプレイヤーは丸焦げになっており言葉を発することなくそのまま横たわった。
大きな炭のようになった彼は口から黒い煙を出しながらピクリとも動かない。そして死亡を報せる文字が表示されていた。
仲間の1人がその光景を見るなり慌てて走りだし逃げようとした。
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