第35話 枯樹生華

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「もぅ追ってきやがった」 「おい、さっきのはなんだ?」  逃げ出す者に声をかけたが、脚を止めようとはしなかった。俺の呼び掛けが邪魔なのか、一心不乱に離れようとする。 「んな事も知らねーで残ってたのかよ?麒麟だよ、麒麟っ!形勢立て直さねーと、集めたレアアイテ……」  形象し難い音が彼を襲い、そして焦がした。  天からの鉄槌は音速の域を軽く凌駕していた。死への扉を開いた瞬間、天国の光が彼へと射し込み、そして天使が彼を連れ去るように、あの世へと(いざな)った。  光りとほぼ同じくして、仕留めた事をつげる音が鳴った。 「Dr.徳永ぁ!!引くのじゃぁ!!」  グデンファーの声に従い、俺は正面を向いたままバックステップで必死に下がった。  俺を狙う雷は何度も足元へと落ちてきたが、グデンファーの指示も功を奏し、危機一髪で避けることに成功した。 「あそこじゃのぅ」  グデンファーは片腕を失っている。残された腕から繰り出された剣技は空中を渡り、とある1点にヒットした。  スパンと切れた竹が地上へ落下し、竹の葉が擦れながら横たわる。そして、数秒遅れてスタンと綺麗に着地した物体が俺達の前に姿を現した。 「うむ……こやつが」 「強そうね」 「あぁ……やっと遭えたな」  四足歩行のモンスターが俺達の目の前にいる。馬のような姿であるが、脚や、身体の1部が灰色の雲で覆われていた。その雲はゴロゴロと音をたてながら、時折ピカリと光っていた。 【BOSS:麒麟】  改めてBOSS名が表示された。表示された瞬間、俺は即時詠唱でBOSSの情報を知る魔法を発動した。だが、俺の行動を不審に感じ取ったのか、また上空へと駆けていった。 「逃げたの?」 「いや……俺の魔法に敏感に反応しただけだ。俺の魔法が攻撃魔法じゃないとわかると、奴から攻撃してくる可能性があるぞ?」  麒麟とは今回が初対面だ。奴を大空へ逃がしてしまったのは悔やまれるが、情報を得られたのは成果としては大きかった。  麒麟は警戒心が高く、なかなか姿を現さない。奴は雷を身体全体に纏っており、光速の光でターゲットを仕留めてるのが特徴だ。  ライフゲージは他のBOSSに比べて少ないが、唯一無二ともいえる雷を従えている点が奴の危険度を底上げしている。
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