1041人が本棚に入れています
本棚に追加
言われてみればその通りだ。逃げているプレイヤーを必要以上に追いかけては仕留めると直ぐに逃げていった。
彼等は何かしらの麒麟と出逢う方法を探し当て、試したが殺されたと推測する方がどうやら正しいようだ。
でも、麒麟は元はと言えば、中国で昔から語り継がれてきた伝説の霊獣だ。諸説あるが、他の霊獣よりは温厚で簡単に生き物を殺めたりするタイプの獣ではないと聞く。
しかし実際のところ、1900組後半の参加者が麒麟に敗れている。雷そのものを操るモンスターはドラゴン系に何体かいるが、ここまで攻撃スピードに極フリしているのは麒麟が初めてだ。
「ま、感心してばかりもいられないよな。俺達も何とかして麒麟と出逢う方法を見つけないとな」
「なんで院長は少し嫌な顔してるの?」
「嫌な顔……?あぁ、俺昔から雷はあんまり好きじゃなかったんだ」
リコに指摘されるまでは気づかなかった俺。無意識に嫌そうな顔をしていたのは雷に対する恐怖心があったからだ。
幼い頃、公園で遊んでいたら雷雲に遭遇してしまい帰るタイミングを失ってしまったことがあった。当時は傘を装備しないまま遊びに来ていた為、突然の雨に何も出来ずにいた。
激しい雨を何とかやり過ごそうと、公園内にある大きな木の下で雨宿りをしていた。
その時……
突然の光に包まれたかと思えば、何かが砕けて割れるような音が飛び込んできた。
数十メートル離れた大きな木に雷が落ち、大きな木が真っ二つに裂けてしまったのだ。幸い、大きな火事へと発展こそはしなかったが、小さかった俺の心を震えさすには十分過ぎる出来事であった。
もし、雨宿りに選んでいた木があっちの方だったら……
もし、雷が今雨宿りをしていた木を落雷ポイントに選んでいれば……
それ以降、大空がゴロゴロと音を立て始めたときは、直ぐに大きな建物内に入ってやり過ごすようになった。
今回も、ある意味同様なのかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!