第35話 枯樹生華

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 苦手な雷の事をここまで考えたのも久しぶりだった。電気タイプのモンスターと戦闘したことはあったが、落雷クラスの電気を操るモンスターはいなかった。 「……」  リコと話していると、ある案が頭に過ったのだが、良案には程遠い愚策だった為、口に出すのはやめようとした。  そんな間をグデンファーは見ていたようだ。 「どうかしたのかのぅ?」 「いや……」 「そうか。ワシには何か思いついたように見てたのじゃがのぅ」  グデンファーめ。こいつ、俺の心を直ぐに読んでは核心をついてくる。 「禁則地の時でも思ったけど、あんたもなかなか性格悪いよな?ハバといい、あんたといい、蒼の一撃には頭のキレすぎる奴が多すぎないか?」 「蒼の一撃は人数が多いからのぅ。ワシみたいな年寄りを立てる年功序列が存在してしまったのだろぅ」  年功序列?あんたが蒼の一撃の中で一番強いじゃねーか。アリスは性格は素直で強いが、求心力というか仲間を束ねる懐の広さはグデンファーが一番だ。  さて、グデンファーに気づかれてしまったので、変に嘘をついても直ぐに見破られるので早いうちに自白でもしておこう。 「2人とも、竹の伐採には興味あるか?」 「竹ぇ?興味はないけど、どうしたの?」 「うむ。刈れと命令されれば出来なくはないぞ?」 「じゃあさ、試しに手前の竹1本だけ伐採してみてくれ。グデンファー頼めるか?」 「お主の頼みとあらば」  グデンファーは難なく指定した竹を切り落とした。すると竹が倒れ、地面に着くなり跡形もなく竹が粉々になり消えた。 「なっ……なぜじゃ」 「竹が消えちゃった……」  2人とも、竹が消えた事に驚いていた。竹を切り落とせる能力はあるのに、切り落とせるとは思っていなかったようだ。 「やっぱり。この竹、破壊不能オブジェクトじゃないみたいだな」  フィールド内にある自然は、景観や地形を損なわない為、破壊不能オブジェクトに指定されていることが多い。だが、この竹は伐採するなり存在が消滅した。  つまり、破壊可能、伐採可能な竹ということになる。 「Dr.徳永……もしかして、これは」 「あぁ、そのまさかだ。伐採可能ってことは、運営側が『伐採していいよ』ってことだ。攻略に必要だからさ。1本だけ残して、後は近くにある竹は全部伐採しよう」 「院長、まさか……」 「あぁ。そのまさかだ。これで雷を呼ぼう」
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