第35話 枯樹生華

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 伐採した竹を処理しなくて良いのは好都合だ。竹って伐るのは意外とスパッと出来るんだが、その後の竹を運ぼうにも、燃やそうにも労力も費用も結構かかる。  俺も昔は父親と一緒に知り合いの竹藪の清掃のボランティアに行っていたからわかる。  伐採後の処理が自動だなんて、やはりゲームの世界は無駄がなくて素晴らしい。  竹の後処理に感動しているのもこれくらいにしておこう。  煌々としていた満月は徐々に陰りを見せ始めた。低い音が時折鳴り、何かを狙っているようであった。  待つ。リコとグデンファーは既に剣を握りしめながら低い体制を取ったままステイしていた。 「グデンファーさん凄い。待っているだけなのに攻撃力が上がっちゃった」 「ワシ等はどんな状況でも戦闘を有利に運ぶことができるよう、様々な陣形を開発しておる」 「流石、最強ギルドね。ノウハウが凄すぎる」 「興味が湧いたかのぅ。ワシ等はリコ殿の加入をいつでも歓迎しておるぞ?アリス君も同性の君が入る事を喜ぶじゃろう」 「いえ、それは遠慮しておきます」  リコはグデンファーからのオファーを嬉しそうにはしていたが、丁重に断っていた。以前、俺もリコに同じような質問をしたことがあった。二刀流からすれば、同じくジョブのギルドに加入するとリコ自身にもプラスになるのではないかと思ったからだ。  しかし、リコの答えは『ノー』だった。同じジョブからの刺激はプラスになるが、逆に独自色が薄れるからだと教えてくれた。  俺は周りに同じ治癒師がいないから、リコの気持ちはわからなかった。それでも、リコは、アリスとテラスのクエスト以降、ずっと一緒にいてくれるようになった。勿論、ソネルも。まるで家族のようだ……  家族……か。  夜に一瞬の光が大空を照らした。暗闇で確認できずにいたが、大きな雲の存在が確認できた。  そして……  一筋の光柱が、残されていた1本の竹に向かい眼にも止まらない速度で落ちた。竹は立てに真っ二つに裂けていた。 「現れたぞ」  グデンファーの声がさす方向を確認すると、俺達が探し求めていた神獣が姿を現していた。  そして、先程耳にした曲がフィールド上に流れ始めた。  なんとも神秘的で伴奏とともに、荒ぶるピアノの旋律が光の如く恐怖を加速させていた。雄々しい麒麟の姿は雷を纏いながら此方をみていた。 「さぁ、逢えたぜ麒麟さんよ、狩られる準備はできてるか?」   
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