第35話 枯樹生華

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 反則だと批判すれば、それで全てが説明できてしまうので楽だった。対等とであれば文句の1つや2つなんて団子に混ぜて呑み込んでしまうのだが、奴の強さが俺達の息を止めてしまい()せ返す程だ。  事前に相手の攻撃を予想して避けるだなんて事が『無謀』だと言うことくらい頭では分かっていた。麒麟の攻撃を完全予測できることなんて神業は存在せず、俺達は何度も奴からの攻撃をまともに受けてしまった。 「何とか……なっちゃうの、あれ」 「おっ?息がまだあるじゃん。でも、そんな弱気じゃ大事なお宝が失くなっちゃうぞ?」 「あ、あのね……要らないだなんて一言も言ってないわよ」 「そうそう。その意気(いき)だ。(いき)が荒れても、|生き(いき)残る事だけに集中しようぜ」 「んもぉ~。『いきいき』言われ過ぎて頭がこんがらがるじゃない」 「うむ。選択肢が多いと難しいよのぅ。……どれ、では減らす事に専念するかのぅ」  グデンファーは妖刀を妖しく構えた。今まで見たことのない独特な構えから放たれた斬撃は、麒麟に向かうのではなく、地面を潜り姿を消した。  警戒していた麒麟であったが、此方の攻撃がないと判断するやいなや、動き出そうとした。  我慢を忘れた子どものように。倒したいと願う気持ちが麒麟の行動を焦らせていた。  不意に動こうと、後ろ足が動いた瞬間、グデンファーは笑った。 「良いのかのぅ、そっちで?」  グデンファーの声に反応したかのように、麒麟の足元から斬撃が突如現れ麒麟へダメージを与える事に成功した。 「おぃ、もしかしてさっきの斬撃、麒麟が動くまで地中に隠しておいたのか?ってか、そんな攻撃が存在して良いのかよ?」 「あぁ、地中で大量に待たせてある。安心せい、Dr.徳永。地雷(クレイモア)のような無差別に攻撃してしまう代物と違って、麒麟の行動に反応するようになっておる」  さも当然かのように真顔で答えてくれたグデンファー。しかし、ホーミング機能の斬撃を地中に隠したままに出来る、あんたのスキルが異常過ぎる。  だが、グデンファーの一手により麒麟に迷いが生まれた。進むことも退くことも。そして攻めることも護ることの選択肢に陰りが現れ、感情のままに動けずにいた。
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