第35話 枯樹生華

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(9)  俺達に回復魔法があるとはいえ、勝負に勝てる陣形が整っているかと言えばそれは別問題であった。  普段であれば、こちらのライフゲージが尽きない限り勝機は転がりこんで来ていた。だが、今回は違う。いや、むしろ同じだ。  俺達と同じだ。  麒麟の傍には変な物体が雷を操作し回復をサポートしている。麒麟の意志をコントロールし、無理矢理回復させている点では悪魔のような存在のようだが、害というわけではなさおそうだ。宿主である麒麟の身体を失わぬよう努力している様はまるで寄生虫だ。  幾らリコやグデンファーの斬撃を浴びせても、上空へ距離を取り回復されればまた『ふりだし』だ。  また、闘っているうちに判った事なのだが、麒麟には即死級の技が存在した。他の技とは明らかに雷の威力が違う。他の技であれば、ライフゲージが尽きる前に俺の即時詠唱でなんとか一命を取り留める事が可能であったが、どうもそれが無理そうだ。  当たれば即死の一撃。  蒼の一撃ならぬ、『光の一撃』と言ったところであろうか。  光の一撃は威力が凄まじい為、麒麟でさえ上手くコントロール出来ていないようだ。俺の分析魔法から導きだした情報によれば、命中率は7%前後。これは、こちらが幾ら回避率のバフをしたところで命中率を下げることは出来ない。  奴の一撃必殺が当たらないように祈りつつ闘わなければいけない。 「んもぅ、また逃げて回復しちゃった」 「これでは、こちらが力尽きる方が先じゃな」  こちらの戦力部隊からは溜め息が漏れていた。 「麒麟が逃げれないだけまだマシなのかもな。他の参加者の時は、麒麟はこの場から逃亡までしてたんだからな、ははは」 「笑っている場合?余裕を見せてたらそのうちあのおっきい雷柱が院長の頭にどっかーん!!って降って来ちゃうわよ?!」  こらこらリコ君。縁起でも無いことを言わないでくれ。俺なんかより、むしろファラオに落ちた場合、奴が対処できるか見てみたいと思っている。  あぁ、影からひょっこり現れてくれないかなぁ、ファラオさん。 【しかし、ファラオは現れなかった】  紅鯱に襲われる前までは一国一城の主だった。数々の修羅場を潜り抜けて来たあんたなら、雷ごときに負ける筈がないよな?なぁ、そうだろ?相棒!! 【しかし、ファラオは現れなかった】  ……ふっ。やれやれ、血で血を染めあった我との契約をもう忘れたのであれば、思いださせてくれようぞ。混沌の影に潜みし、暗黒の王よ。そなたに刃向かう下等生物に裁きを!!  ふはははは。光など恐れるに足らぬわ。(ひざまず)けっ!命乞いをしろっ!!……ね?ですよね、親分(ファラオ)!! 【しかし、ファラオは現れなかった】  ズグズグチャン!!ズズズズズズチャーン!!ダガダガズズズズズチャーン!!テロレロテロレロっ!テロレロテロレロぉ! ダダッ!(ツツタツ、ツツタタ) ダダッ!!(ツツタツ、ツタタ) 【ライはファラオ登場時BGMを熱唱した。しかし、ファラオは現れなかった】
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