第35話 枯樹生華

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 天からは降り注ぐ雷が、麒麟さんの身体からは直進する雷撃が何度も2人を襲った。直撃こそは無かったけれど、2人のライフゲージの大半を奪う形となった事には代わり無かった。  大きく振りかぶったグデンファーさんのモーションに反応した麒麟さんは私を解放するような形で離れるように距離を取った。 「リコ、生きてるか?!」 「どうして……助けに来たの?」  情けない姿しか持ち合わせていない私。両手には何も握られてはいない。手ぶらでいることが耐えきれないせいで、視界が水分で満たしてきた。 「俺がリコを助ける事なんて当たり前の事だろ?俺は」 「治癒師(ヒーラー)だからでしょ?知ってるよ。ねぇ、院長。自分勝手で馬鹿な性格(わたし)って一生治らないのかなぁ」 「ん?治らねーだろ、そりゃ」 「……」 「長所なんだしさ」 「えっ?!」 「何を言ってるの院長は。仲間の忠告を無視する事のどこが長所なの?」  今回だけに限らない。おばぁちゃんやおかぁさんの言葉を無視し、華道から離れた時もそう。考え直すよう何度も何度もアプローチしてくれていたのに、その言葉を受け止めないように、違う道を選んだ。  いつもそう。  いつもそう。いつもそう!いつも……そう。  これ以上言葉を交わし合う必要がないと私が決めた途端に周りを排除する。そんなどうしようもない、可愛げなんて一切ない性格が…… 「長所(ちょ……しょ)?」 「あぁ。多くの人は、動き出す為の1歩がなかなか出ない。躊躇しする。自らの動きを止めたままにできる『都合の良い』言い訳捜しを始めちゃう。だけど、リコは違う。俺の声なんか届かないくらいに速く動ける」 「……違うよ。院長の言葉を受け取ろうとしなかった……だけ」 「それも立派な行動だ」 「立派じゃない……間違いだらけだよ」 「あのなぁ、リコ。『間違い』だなんて単なる結果(··)であって、行動そのものを否定したら駄目だぞ?決断し、行動に移せた過去の自分そのものを否定してることになる。そんな考えは何も生まない。結果に縛られず思ったように動いたほうがワクワクするだろ?」  院長は何故か笑いながら話してくれた。怒られると思っていた私は院長の言葉に圧倒されて何も言えなくなった。
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