第35話 枯樹生華

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 やはり鋏に(まつ)わる全ての事柄が最悪の結果を招くのだろうか。触れるだけでなく同じ空間でも影響しちゃう。  こんなの麒麟さんクラスじゃない。直撃を間逃れていたとしても、帯びていた電撃に近づいただけで様々な状態異常を招いていた。  もはやこの鋏は現実世界に降臨してきたBOSS級イベントだ。この場にいるみんなは全員が戦意喪失。一定の距離を取りながらこちらをみている。  BOSS戦中も一緒の光景が広がる。デスペナルティが怖くて戦闘に参加しない者も少なくない。  確かに、モニター越しで視聴するより、生の眼で間近でBOSS戦を眺めるのは楽しい。千葉にある遊園地のパレードと同じ現象だ。参加はしないけど、最前列で眺めている。  視るだけでも楽しいよね。  でも、それじゃあもう満足しない。  いつでも、自分が主人公でありたいし、私の人生くらい私中心で生きていたい。  ……ん、視るだけ?  ちょと待って!!  私は用意された華を少し剪定してみた。すると少し伸びては直ぐに枯れてしまった。  必ず枯れた。  それは間違いない。ただ、私が見落としていたのは、枯れる手前。少し伸びていたという事実だった。どうしても『枯れた』という結果に囚われてしまい、途中に何が生じていたのかをちゃんと理解していなかった。  だから『枯れた』『倒れた』だなんて結果だけに怯えて、この鋏の事をちゃんと知ろうともせずに距離を取っていた。  この鋏の性能……わかっちゃった。  院長が傍にいたらもう少し早く解読できていたかも知れない。院長なら、「リコ。なんでも知ろうと努力しないと、武器にも技にも嫌われるぞ?思い込みや知っているつもりは伸びない」なんて事言われてそう。  って、なんで私、院長がいないのに院長が言いそうなこと考えてるんだろう。  ふふふ、馬鹿みたい。横山派最大のピンチの場面なのに、なんで楽しんでるんだろう。  横山派を助けたいだとか、倒れた人への罪滅ぼしとか、そんな下らない負の感情で動くよりも、楽しいと感じる方へ漂ってみるのも悪くないよね? 「陸・セガールさんが展覧会に入ったのは何分前?」 「……えっ?確か、5分前くらいだったような気がするわ」 「ありがとう。あと、陸・セガールさんって身長何センチくらいかわかる人いる?」 「そ、そんな事なんで今知りたいん、凛々胡はん」 「大事なことなの。この展覧会、私色で染める為の大事な情報なの」
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