第35話 枯樹生華

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 陸・セガールからの呼び出しだけあって、すぐに出口付近に集められた。何故集められたかはわからなかったが、彼の立っている直ぐ横に枯れ果てた作品跡のようなものが置かれており、横山派の関係者は落胆の表情を浮かべた。 「これなんだが」  指まで指さなくともわかりますっといった横山派一同。急病人が出た中、なんとか無事に展覧会は進んでいた筈だった。穴のでた3作品のうち、先代と先生の2人で2作品を仕上げ、出口は何も置かないという形で進んでいたのに。  最後のサイゴに飾った記憶のない作品らしきモノが置かれていた。  先代は直ぐに気づいた。切り口と生け方から、これは凛々胡の仕業だと確信した。 「申し訳ございません、その作品は、我々横山派とはちが」 「およし」  謝ろうとする先生を静止させた先代。 「凛々胡に作品を飾る許可を出したのは、私だよ。あの子がこの展覧会の空間内に置いたのであれば、それは間違いなく私の責任だよ」  先代は陸・セガールに対し深々と謝ろうとした、その時…… 「待ってください。やはり貴女達2人も知らなかったのですね、今の作品の状況をだけを見ると、そう思うのも無理はないでしょう。私は知りたいのです。『誰が』この作品を作ったかを」 「私……です」  凛々胡は、他のお弟子さんに肩を借りながらやっとの思いでその場に立っていた。 「おや?ご気分が優れないようで」 「えぇ……その作品作るのに体力使いすぎちゃって……へへ。どうでしたか?ちゃんと出逢えました?」  陸・セガールは凛々胡の一言で確信した。自分の考察どおりであり、この作品は自分だけに送られた作品だということも一致していた。  そして、  凛々胡が陸・セガールに見せたかった一瞬の奇跡は偶然ではなく必然だったことを知る。 「君……名前は?……って、会話から察するに、横山……リリコ君で間違いないかい?」 「えぇ、そうです」 「そして、横山さんの話では『横山派の人間ではない』、つまり生徒ではないという認識で良いかな?」 「……えぇ。もう離れていますので」 「わかった。じゃあ、君と直接交渉しても良いんだね?3000万でどうだい?」 「……はい?」  陸・セガール以外のこの場にいた人間の言葉を詰まらせた。作品を作った凛々胡でさえ眼を円くして口が開いたまま。 「えっ……と」  困惑したままの凛々胡の手を握る陸・セガール。 「君、横山派ではないようだし、フリーなんだろ?枯れる時間を操った君のマジックは素晴らしいものだ!私の次の企画展を是非飾って欲しいのだよ。その為の交渉金兼前払い金だと思ってくれたらいい。どうだね?」
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