第36話 良薬口に苦し

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 「これなんだと思う?」  リコの目の前に並べられた物体。 「何って、玉ねぎ、じゃがいも、にんじん。でしょ?……ん?野菜?!なんで野菜がゲームの世界にあるの?」  素晴らしい反応だぞ、リコ。  リコのリアクションはわかりやすくて他の人よりオーバーなところがある。あまり表情を崩さないソネルと一緒にいるから余計に目立つ。  元気なのは良いのだが、動き回り過ぎて時々スカートから見えちゃてるのは如何なものなのか……  いや、別に薄い水色が嫌いというわけではない。それに、院内には運営者側が設置したライブカメラは存在しないので、院内の様子が他のプレイヤーに視られる事はない。  だから院内で、ゴーストタイプのBOSSが診察しようが、人気AIパフォーマーがお忍びで頻繁に遊びに来ようが、最大ギルドの剣聖さんがこっそり尋ねて来ようが……  カリスマ詐欺師ちゃんがいようが、トップクラスの人気者の二刀流バーサーカーさんのパンチラオフショットが観れようが、  大丈夫なのだ!!  直接院内に来ない限り、他のプレイヤーに知られる事はないのであるっ。  むしろ、この状況が他のプレイヤーに知られでもしたら、大量の人がやってきて俺の安息の地が脅かされてしまう。  そんな事態は断じて許さない!!  無邪気に驚いて跳び跳ねてるリコの太ももの後ろを、ゆっくりと眺めていられるこの優雅な一時を邪魔されてなるものか! 「ねぇねぇ、院長なんで野菜があるの?」 「……水色かぁ」 「えっ?!何、水?」 「あ!!いや、すまん。こっちの話だ」 「ねぇねぇ、何で野菜があるの?」 「あぁ。実はな……」  このゲームの歴史は長く、PCのモニターでプレイしていたときから、フルダイブ型に完全移行し、その後も少しずつカスタマイズされて今日までやってきた。  そして、これまでは完全なる再現が難しかった『味覚』機能が、この度の大型アップデートにより追加されたことをリコに伝えた。 「味覚?!ってことは、ゲームの世界内で食事が出来ちゃうってこと?!」 「あぁ。その通りだ」  これまでは、ロムの実を使用しても『苦くて不味い』という感覚だけだった。今回のアップデートで、苦い意外の感覚が追加され、美味しいと感じることができるように進化した。 「今日は調理して美味しい物でも食べてみようぜ」
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