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「料理?!楽しそう!!……って、食材だけじゃあ美味しいモノは作れないよ。このゲームって、食材だけ集めれば勝手に美味しい料理が完成しちゃうシステムなの?」
リコの鋭い質問に俺はタジタジだった。
「流石は最恐の二刀流バーサーカー様だ。質問も切れ味抜群だな。そうなんだよ、旨いもの食べるには調理が必要で、キッチンから調理器具、皿から箸まで全部揃えないと食べることができない」
「キッチンも……って、そんなのいくらぐらいするの?!」
「よ、400万……」
「400万?!そんなの無理じゃない!400万あれば大型ギルドに所属しているプレイヤー全員に最新の武器配れちゃうくらいの大金よ!」
その通りである。討伐報酬として、かなりの額が稼げる希少種BOSS【ゴールデンリヴァイアサン】ですら20体倒さなければならない。
現実的に個人プレイヤーがキッチンを購入するのは無理な話なのである。今はまだ『味覚機能』が実装されたばかりであり、運営側の意図とすれば、これからプレイヤーが食事できる酒場やレストランを街に設置していき、行く行くは個人でも手軽に調理ができるように整うのだろう。
本来は。
だが、俺たちはそんな流れを無視しちゃう結果になっている。結果……というよりは大惨事になっていると言った方が正しいのかもしれない。
「実はな、リコ……もう、院内にキッチンがある」
「ふぁい?!嘘でしょ!!」
リコは恐る恐る隣の部屋へと移動した。するとリコの目の前には最新型のキッチンを始め、食器棚やダイニングテーブルなどが飛び込んできた。
「何これ院長……揃えたの?いくら……したの??」
「トータルで600万はしたらしい」
「らしい……って、院長お金さんに無頓着なタイプなの?!駄目だよ、大金で衝動買いなんてしたら!!将来奥さんが困っちゃうよ」
「それなんだが……」
そのとき、テローゼが起きたようで目を擦りながらふわふわと漂いながら俺達の前に現れた。
「ドウシタ?騒ガシイゾ。オ化ケデモ出タカ?」
ゴースト系BOSSにお化けの心配をされる筋合いはない。俺はテローゼが一番怖いよ。
「テローゼちゃん、見て!!院長ったら、診療もしないでこんな物買っちゃって」
「嗚呼、キッチンカ。好キニ使ッテイイゾ」
「えっ……?」
「解っただろ?キッチンを購入したのは俺じゃなくて、テローゼだ。勝手にな」
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