第36話 良薬口に苦し

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「かか勝手にってどういう事?院長のタンス預金全部使っちゃったの??アリちゃんやイオちゃんの餌代は明日からどうするの?」  あたふたしながらリコは自分の所持金を確かめていた。残念ながら餌代の心配は御無用。それに、俺は女性にお金を出させる真似はしない。  では、リコよ。早速で悪いんだが『訂正祭り』と行こうじゃないか。  まず、イオマンテは野生のモンスターの中ではヒエラルキー頂点クラスの分類。俺がわざわざ餌を与えなくても生きていける能力は備わっている。俺が餌付けすることで、無益な殺傷を少なくしていると言っても過言ではない。  むしろ心配するのはアリストテラスの方だ。あいつ、育成期間が長過ぎるせいか、今では野性味がすっかり失われ、俺があげる餌以外自分からは何も捕獲しなくなってしまった。過酷なフリーフィールド内で一番平和主義者なのかもしれない。せめてその辺に成っている実ぐらい自分で()いで食べてくれ。  次に、俺の予算ではキッチンの『キ』の文字まで買えそうにもない。俺目当てで医院を尋ねるプレイヤーが1日に数人くらいで大した報酬など貰えていない。  そして最後に、俺はタンス預金なんてしていない。袖机の上から2段目貯金だ。勿論、言う筈もないが、見つけたとしてもくれぐれも使うなよ?テローゼ、お前もダゾ? 「勿論、俺は支払いに関与していない。テローゼが溜め込んでいた資産の1部を使用したらしい」  無論、俺は女性にお金を出させる真似はしない。だが、勝手に支払った代金は別である。 「テ、テローゼちゃんの診察ってそんなに大人気なの?!」 「別二診療ナンカ片手間。暇潰シデシテルダケダゾ?」 「何が片手間の暇潰しだよ。テローゼの診療が大繁盛過ぎて、カルテを片付けてある棚のほとんどを占めてるじゃないかよ。俺の患者分なんて、片手で取り出せる量だぞ?  キッチン買い揃える資金あるなら、むしろカルテ棚増やしてくれよ、ったく……」  テローゼが頑なに棚を増やさない理由は知っている。増やすと患者が増えそうで心理的に嫌なんだろ?「仕事二追ワレタクナイ」とかそんな理由だろ、大体想像つく。 「仕事ノ話ヨリ、料理始メロヨ。料理ガ冷メルゾ?」 「大きなお世話だっ!元々は俺に内緒でキッチンなんか設置したテローゼが悪いんだろ?だから、無理矢理でも有効活用しないと俺の心が晴れないっ!!こうなったら、思う存分調理して料理して、クックしまくるからな?!覚悟しろよ!!……ってか、まだ料理してないから冷める物なんてないっ、これからだよ、こ・れ・か・ら!!」
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