第36話 良薬口に苦し

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 通常、イオマンテは街中を徘徊することはできない。フリーフィールドの野良BOSS様が平和な街中を歩かれれば、それこそ他のプレイヤーは安心して買い物ができない。以前は、ペットや遣い魔的立ち位置で同行できた時もあったが、今では制限されてしまっている。だから今では…… 「あれ?!隙間から鳥型のモンスターが院内に入ってきたよ?何か袋みたいなのを咥えている」 「早速来たか。ご苦労」  新たなサービスとして導入が始まったのが、この鳥である。こいつは『デリバリーバード』という種族で、フリーフィールドのアマゾンエリアに棲むモンスターである。  プレイヤーを襲うことがない超がつく程の温厚な性格から、運営側が街中に入る事を許可した数少ない種族である。 「サンキュー。おっ?!来た来た。送り主はフリーフィールドにいるイオマンテからだ。アイツが仕留めたばかりの新鮮な肉を送ってきてくれたんだ」  さすがイオマンテだ。仕事が早いっ!もう少し時間がかかるかなと心配したが、こうやってちゃんと俺の話を聞いてくれてるじゃないか。いつも餌やりの時に俺の頭ばかり噛むから、今日くらいは俺の言うことを素直に聞いてやろうと言った所だろう。  仕方ない。今まで受けてきた傷は今回の件でなかったことにしてやろう。 「さぁ!肉が届いたぞっ?!肉と野菜達で【カレー】を作ってみようぜ!!」 「カレー?!」 「あぁ!……って言っても肝心なご飯がまだ実装されていないから、正確には【カレーのルー】だけなんだがな」 「素敵っ!じゃあ、そうする?!」 「私も……食べたい」 「ン?盛リ上ガッテイル所、悪イガ、カレージャナクテ【シチュー】ニシロヨ?」 「なっ……その手があったか!」 「テローゼちゃん、お料理できるの?!」 「シチュー……良い」 「当タリ前ダロ」  米無しカレーを食べないと駄目だと思っていた俺達に、テローゼから素晴らしい提案があったので、俺達3人の気持ちはいっきに上昇した。  俺達3人は眼をあわせ、これから始まる調理に向けて心を踊らせていた。 「ット言ウカ、シチューヘノ考エガ無カッタ時点デ、3人共、料理音痴ダロ?」  
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