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リコやソネルの気持ちも痛いほどわかります。味覚機能が充実され、苦いという苦痛意外に『甘い』や『辛い』、『酸っぱい』や『渋い』など、口から拡がるハーモニーが約束されたというのに、まさかメインが虫の肉だなんて罰ゲームだ。
自由とワクワクを求めてこのゲームの世界に飛び込んできているのに、一度昆虫を口の中にほりこめば、一体どんな歯応えと味が出迎えてくれるのだろうか。
「ン?調理スル前カラ、食材二『ケチ』ツケルナヨ」
「何言ってるの、テローゼちゃんは!!昆虫なんて、食べ物じゃないの!!」
「ドウセ、喰ワズ嫌イダロ?」
「あ、当たり前でしょ!食べたことないわよ、そんな物!!食べなくても生きていけるわよ!生きてきたわよ!」
「リコハ『無知ノ知』カラダナ」
テローゼは淡々と話した。
『知らないことを知り、自覚し、行動し、経験し、結果を積み重ねる事が生きること。それに加え、体内へ摂取する物が身体を作り、健康な身体が心を維持し、欲望が明日をつくる』と説明した。
「えっと、あ、あぅ……ん」
拒絶反応だけを見せていたリコを言葉だけで説得しているテローゼ。決して、リコの考えを否定せず、テローゼが感じる『生きること』について優しい口調で伝えているだけ。
その行為だけで、堅くキッチリと閉ざされていたリコの心を、いとも簡単に抉じ開けてしまった。
「昆虫ガ悪イノカ?」
「ううん……そ、そうじゃなくて」
「食ベテカラ好キカ、嫌イカヲ決メテモ遅クナイダロ?」
「そ……そうかも」
……えっ?!
ちょっと待ってくれ。テローゼさんにリコ。君達は何を言っているんだ?
【あの可愛いリコの口の中に虫の肉が入る】
ちょっとどころか、見てみたい。個人的には間近で嫌がりながら、それでも必死に虫肉を食べようと格闘する表情をずっと見ていたい。
そんな苦悶の表情なんか、誰もみたことはないし、俺にだけ見せてくれるだなんて、なんという背徳感祭りだ。
開催したい。今すぐリコに食べさせたい。
俺の中の、悪魔的な部分が脳内にそう呟いては離れない。
でもな……
「こらこら、テローゼ。催眠術的な会話でリコの操作をする悪ふざけはここまでにしてやれ。初めての食事くらいリコが一番食べたい肉を選ばせてあげようぜ」
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