第36話 良薬口に苦し

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(2) 「ライさん」 「ん?どうした、ソネル」 「玉ねぎさん出てこないの。剥いても剥いても……皮だらけ」  一生懸命1枚ずつ丁寧に剥いていたのであろう。包丁を入れずして玉ねぎが綺麗に1枚ずつ分離されていた。  一方で、刃物担当のバーサーカーさんはと言うと…… 「あぁ、またお野菜ちっちゃくなっちゃった」  リコよ。ここは刃物の実演販売場ではないのだぞ?切れ味はわかったから、食材が一番美味しいと感じる大きさに頼むから切ってくれ。  2人の作業をみて薄々と感じたんだが、極度の料理音痴だとわかった。  別に俺の分析スキルの効果によりわかったわけではない。2人のお粗末な動作を見れば誰でもそう思うに違いない。  テローゼも「まさか、本当に料理音痴だったとは……」と思ったんだろうな。あれ以降全く2人をいじっては来なくなった。これ以上指摘したら可哀想だと判断した結果だろう。  ゴースト系BOSSに気を使わせる程とは……  2人が食材と格闘している間に、イオマンテ経由で肉が届けられた。俺の知らない謎肉が届いたが、テローゼに聞いてみたら「ソレハ昆虫ジャナイ」と教えてくれたので良しとしよう。 「ねーねー!院長っ!」「ライさん……あのね」 「ん?どうした?2人とも」 「今回はね、味付けからはソネルちゃんとそれぞれ別のお鍋ですることにしたの!」 「どっちの味が好きか……選んでほしいの」  なっ……!!  姉妹のように2人仲良く1品をつくると思っていたら、途中からそれぞれ別で作ってくれるとのこと。こんな嬉しいシチュエーションがあって良いのだろうか。シチューだけに、シチュ……  浮かれるのはまだ早い。俺には2人の料理の評価をしなくてはならない重要なミッションが残されている。  流石の俺でもわかる。甲乙をつけてしまうと、片方が喜び、もう片方が悲しんでしまうのだろう。だからこの場合は気の効いたコメントを2つ用意して、2人を満足させるのことが重要となる。 「あぁ、わかった。じゃあ2人とも頑張ってくれよな」  俺は2人からのお願いを素直に受け止め、イオマンテから届いた肉を2人に渡した。
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