第26話 竜を統べし者と虎を掌握した者

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「敵さん、こっちに段々近づいているみたい。ほら、イオちゃんも怖い顔……してるよ?」 イオマンテはある方向を睨んだまま視線を外そうとはしなかった。 一点だけを集中して熟視しては、攻撃力を高めるイオマンテ。 「まずいな……他プレイヤーの助太刀をするつもりはないが、戦闘に巻き込まれると厄介だな。そうだ!ソネル。俺たちの姿を消せるような嘘技ないか?!」 「嘘技って、裏技……みたいな言い方」 「あぁ、敢えて掛けたんだよ。ソネルの魔法は本物を凌駕するからな」 「じゃぁ、詐欺師のアレンジ技を披露……するね」 そう言ってソネルは空中に魔方陣を出現させた。見慣れない幾何学模様は斬新なアートのよう。 「アレンジ技って既存技じゃないってことか?!」 「そう……だよ。魔方陣の線から流れる魔法波の正道を逆位置にすることで、本来の波形を崩すことが出来るから、そこから魔力ラインを再構築……しているの。 本流域の魔動力である『陽』を変換し、対になる『陰』を原材料とすることで、悪式の魔種分類に位置付けできるから、初見ではまず……見破れないよ?」 「へぇ~そうなのか。さすがソネルだな……あはは」 ……。 ……。 ??ソ、ソネルは何言ってたんだ?何一つわからなかったぞ?! 今の日本語……だったよな?聞きなれない単語だらけで、違うゲームの話のようだ。 それに、この世界の魔法の性質についてここまで知識があるプレイヤー、ソネル以外いないんじゃないのか?! だって、魔方陣の同時発動に成功させていたのは他の誰でもないソネルだし、まさかアレンジ技を論理的に解釈して実行までできちゃうだなんて凄すぎるんだが。 確かに、ソネルはピアノの演奏会でも西園寺の演奏をその場で把握するなり、アレンジ演奏して歴代最高得点出しちゃうくらいだ。 才に愛された人間ってソネルの事を指すんだな、きっと。感心しているとソネルは「もう終わった……よ?」と言ってきた。 「えっと、何がどう変わったんだ?」 「魔方陣の線から流れる魔法波の正道を逆位置に…『あぁ、それは大丈夫だ。悪式の魔種の分類がなんとかかんとかだろ?!』」 「う、うん……」 「俺が聞きたいのは、この詐欺魔法の効果さ。一見なにも変わってなさそうなんだが、大丈夫か?」 「それなら大丈夫……今、空間を誤魔化しているから、ジッとしていれば認識阻害率110%台だから……」 「ひゃ、110%台?!」
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