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第26話 竜を統べし者と虎を掌握した者
「美味しいか?」
「ぐー」
俺の問いかけに対し、幸せそうにもぐもぐタイムを満喫しているアリストテラスは鳴いた。
こいつをペットとして迎えてから様々な事があった。新しい出会いもたくさん経験したし、大切な仲間も増えた。
俺の冒険の始まりは、アリマジロから始まったと言って間違いない。こいつとともに沢山の思い出が鮨詰め状態でギュウギュウに詰まっている。
独り身の俺からしたら、ありがたい話だ。
「ライさん、お世話代わる……よ?」
「いや、大丈夫さソネル。それより、」
「それより……?」
「イオマンテを俺から離してくれないか?先程から頭が痛いんだが……」
アリマジロの世話をしていると、たまにイオマンテが背後から忍び寄り、俺に近づくなりガブリと頭を噛みついてくる。
「大丈夫だよ、じゃれているだけだと思う……よ」
じゃれている?
これが?
頭から血が噴き出しているこの状況がか?どう見ても、獰猛な動物に襲われて捕食されはじめた人間にしか思えないんだが。
「あぁ、三途の川の向こう側で両親が俺に手を振ってる……」
「へっ?!ライさん、それは駄目なパターン……」
「親父、今すぐそっち行くからな……」
「わっ!待って!!ライさん行かないで……イオちゃんもライさんから離れ……て?」
ソネルは俺からイオマンテを引き剥がそうと、イオマンテの背中に向かってポカポカと殴りはじめた。
しかし、ソネルは詐欺師。
嘘については長けているが、腕力や筋力のステータスは低いふつうの、か弱く華奢で可愛い女の子である。
ソネルがイオマンテをいくら殴ろうがダメージを与えることはおろか、全くもってイオマンテに不快感を与えることは出来ていなかった。
むしろ、ソネルに肩たたきをしてもらっていると勘違いしたのか、イオマンテは次に叩くポイントを爪で指していた。
ソネルも言われるがまま、ポコポコと殴り続けている。
餌を食べるアリマジロを世話する俺がいて、
俺の頭をかぶりつくイオマンテがいて、
ソネルはイオマンテの背中を必死に叩いていた。
端から見ればほのぼのする光景に見えなくもないが、若干一人ライフゲージを損傷し、Lアラートが鳴り響いている者がいる。
俺だ。
そんな、生死をさ迷う休日を過ごしていたとき、近くで爆発音が聞こえてきた。
「な、なんだ?今の音は?!」
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