プロローグ

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 だって、よく考えてほしい。  ドアを開けてすぐに隣人がいるというこの状況。  隣だから仕方がない?  いやいや、それが毎日となれば表情も硬くなる。  ただ、コミュニケーションを取ろうとしてくるだけだが、毎日、毎朝、見送られる身にもなってほしい。  どれだけ格好よかろうが、爽やかだろうが、ハイスペックだろうが面倒だ。  女性の朝は忙しい。さくさく用意して出勤したいのに、毎日出くわし一通りのやり取りが行われる。  だから、こうして待っているだろう相手の時間も計算して、少し早めに家を出るようにしたのはここに住むようになって割とすぐだった。  それくらい圧が強い相手に、押しても駄目なら引いてみな的な感じで、断っても駄目なら受諾してみたら、ますます身動きが取れなくなった。 「今日も麗しいね」 「小野寺さんも今日もうざい紳士ですね」  麗しいと言う言葉がまさに似合う相手に胡散臭い眼差しを向けそうになったが、すんでのところで止める。  だが、言葉は正直につるりと出てしまう。
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