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声のかけ方も、謝り方もスマートだ。
これが大人のできる男というものなのか。それなのにっと考えそうになって、千幸は携帯を見つめ嘆息した。
そして、改めて横の相手へとわずかに身体を向け、しっかりと視線を合わせると謝る。
「そうですか。本当にすみません」
「大丈夫だよ」
二重できりっとした怜悧な目元が、千幸と視線が合うなりわずかに緩み、穏やかでしっとりした声が降りてくる。
改めて向かい合い相手を見ると、骨格全ての配置がこれ以上ないというくらい完璧で整った顔立ちをしており、さっきの美声もやばいくらいぞくっとくる声だった。
いるところにはいるもんだなと、今日は本気で腹が立ち落ち込んでいたが、最後にご褒美的な癒しと思えば悪くない。
そんなことを考えていると、相手が慈しむような表情で、また鳴る携帯を浮かない顔で眺めた千幸を覗きこんでくる。
「だからいいよ。でも、何が原因で君みたいな素敵な女性が憂いているのかは気になるけど。話したらスッキリするかもしれないし、よければ話を聞くよ?」
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