【1ネジ】隣、空いてるよ

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 カランっと氷が溶けグラスにぶつかる音がなったので、それに誘われるままそちらに視線をやった。  先ほどと形と角度が変わった氷をなんとなく眺めながら、ぼんやりと告げられた言葉を考えるが、やはり意味がわからない。  そこまで飲んだ覚えはないが、もしかしたらお酒がまわっているのかもしれない。変なテンションで今日は飲んだ自覚はあるので、思ったよりも酔っているのだろうか。  そう思うと思考が鈍くなるような気がして、んんっと首をひねりながら相手を眺めた。  ────このハイスペ男性は何を言っているのだろうか。  改めて観察すると、凛々しい眉に、穏やかに見える瞳の奥には、狙った獲物は逃さないだろう力強さと自信が見え隠れする。  成功者が持ち得る揺るぎないものとでもいおうか、堂々とした佇まいと言動は相手に有無を言わせない、上に立つものにしか身につかないオーラがあった。 「その彼氏、もう元彼か。そこから荷物引き上げて、隣に越してきたらって言ったのだけど」 「引っ越し?」
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