友人という名の

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 笑顔を作ることをせず眼差しだけ怖気付かせられるほどの美貌を有効活用したその表情は、決して千幸に見せることのないものだ。 「いちいち出てくるな」 「何言ってるの。私とあなたの仲じゃない」  その表情を向けられることさえ楽しいのか、弥生は片目を瞑りウインクしてみせる。 「知るか」  まるっきり興味ないとばかりに告げられた言葉に、ふっくらというよりは、すっと横に通った赤い唇を少し尖らせ弥生は敢えて拗ねて見せる。 「可愛くないの」 「俺に可愛さ求めてどうする」 「はいはい。でも、可愛さって男も女も大事よ。それに、同じフロアにいて気にするなって方が無理あるでしょう。 それにね、貸し一つあること忘れないでね」 「……わかってる」  不承不承、その借りが大きいのか仕方がないと頷く小野寺に、弥生はにんまりと口元を引いた。  小野寺翔は偉そうであり傍若無人なところもあるが、根本は悪い男ではない。むしろいい男の部類なのだろう。
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