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千幸の戸惑いなど関係なしに、首を傾げ柔らかな瞳の色が千幸をじっと捉える。
「それがキャンセルなったから。いい?」
「……わかりました。取り合えず、その緩んだ顔を直して頂いたらお付き合いします。外で」
その熱い視線に根負けして千幸は了承した。しっかり外だということを釘刺すことは忘れない。
小野寺はふっと苦笑したが、すぐに嬉しそうに笑うと今は整髪料をつけてない前髪をさらりとかきあげ、どうぞと前へ誘導するように手を動かした。
────無駄に色気あるんだよね、この人。
そして、今は知らないが絶対昔は遊んでただろうなと失礼なことを思いながら、目の前にある真っ黒ではなくこげ茶の髪を見る。光が当たると余計に茶色が目立つが、これはきっともともと持っている色なのだろう。
千幸だって綺麗なものは好きだ。だから、彼の造形に対してはとっても美しいとは思う。思うし、それに見合う仕草だともわかるのだが、千幸にとってはそれだけだった。
「直す直す。良かった。また晩にね」
瞳の色もそうだが、楽しそうに千幸に返答する声も結構好みなのに、残念ながら今はその声を気軽に堪能できない。
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