友人という名の

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 だが、見込みがあるのかないのか、見ていてよく分からない。嫌われてはいないようだが、小野寺の押しが強すぎるのか、千幸の性格からか、会話が一方通行気味に見える。  あの、色気だだ漏れのしかも限定で緩んだ顔を見せられても、なびかない女性というのは稀有(けう)だ。  たまに、あのシレッとした感じでばしっと言ってやってくれと思うこともある。それも、是非ともこちら側に来て欲しい理由の一つだ。  まあ、小野寺がいうように、今日はターニングポイントといえばそうだなっと、山積みの仕事を思い出し溜め息をつく。  仕事は乗りに乗って順調だ。その分、忙しいのだがやり甲斐が多く轟的にはオプションを除いてあまり不満はない。  だが、そのオプションが小野寺的に大事だと言われれば、彼がトップなので従うしかない。  彼のモチベーションを調整するのも、轟の仕事だと思っている。関係がもともと友人であったためその仕事との境目があやふやだが、ここまでくれば仕方ない。  小野寺とは友人というよりは彼を囲んで仲間が増えて付き合いが増えているという感じだが、もう今更なのだろう。  あれこれ考えていると小野寺が出てきた。  その表情はすでに仕事モードである。 轟は時計を確認する。ぴったり五分で気持ちも切り替えてきた、友人兼上司に無言で行くぞとその場から移動した。
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