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毎朝、顔を合わせているとちょっとしたことでも隣人のことを考えてしまうのが、癪なような気もするが現実なのだから仕方がない。
あんなインパクトあるハイスペ男性が隣にいて、気にするなという方が無理だろう。
よくわからない息をついて携帯をしまったのだが、ふと視線を感じて顔を上げるとこちらを見ている元彼の遊川智史と視線があった。
「…………」
だがすぐに、相手は上司に呼ばれたようで視線が外され部屋を出て行った。
一瞬でも気まずい空気に、今度ははっきりふぅっと小さく息をつく。
誰も彼と付き合いがあったことは知らないし、それが幸いといったら幸いだ。
同じ空間にいるときは互いに意識せずにはいられず気まずかったし、たまに何か言いたげに遊川は視線を寄越してきたが、千幸は徹底的に職場の同僚という姿勢を崩さず受け付けなかった。
それは未練があるから引きずられないようにとかではなく、向こうの含むような視線が今の千幸には寄り添う気になれないという方が大きい気がする。
でも、あれこれ思う時点で意識はしているなぁと思うのが現実だ。
いつになったら、普通に気にしないでいられる日がくるのだろう……。
ここ数日何度も思ったことだったが、この日はいつもと違った。
朝会で部長に呼ばれた遊川は前へと出て、本日付けで辞令がおり一ヶ月以内には地方に移動になることを説明された。
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