元彼

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 そして、地方向けにもこの度立ち上げることになったらしい。新しく立ち上げるとなれば、成功すれば栄転でもある。  同じ空間にいては気になるし気を遣うし、やはり思い出すと腹が立ちもするが、もう見えないところに行くのならすっきりするというものだ。  と同時に、浮気されはしたが、頼れる先輩でもあったので嫌いになったわけではなく、いなくてせいせいするが向こうで元気でやっていて欲しいとは思う。  なんか、本当にすっきりした。肩の荷が下りた気分だ。  千幸は彼が話しているのを聞きながら、気持ちがふわっと軽くなったのを感じる。これで本当にいろいろ終わりだ。  さくさくと溜まっている資料をまとめ、自分でも冴えているなと思うほど普段は見逃すものも見つけ出し、新たな資料を添える。視野を広くもて気持ち良く仕事が進んで行くことに、充実感を得る。  そんなどこかすっきりとした顔で仕事をしている千幸を見た遊川は、少し離れたところから足を止め眺める。  複雑な表情をしながら迷うように視線を揺らしたが、結局、千幸に声をかけることなくそばを通り過ぎた。
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