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そこで向かい合う形で座る。
そこまで近くないのに、ソファのせいか家にいるような錯覚さえ覚えるほんわかした距離感に小野寺がいることが落ち着かない。
注文を終え向き合うと同時に向けられた眼差しは、ずっと千幸を捉えて離さずそれでいて柔らかだ。
だから、なおさら店の雰囲気と相まって、落ち着くのに落ち着かないなと無意識に眉をひそめた。
すると、顔を寄せた小野寺に、腕を伸ばされ眉間をトンっと長い指で叩かれた。
「千幸ちゃん。眉間」
「えっ、何ですか?」
千幸が反応すると、腕は何事もなかったようにあっさりと戻り小野寺は楽しそうに笑う。
「眉が寄ってる。何か気に食わないことがあった?」
スキンシップをさりげなくやってのける隣人は、なぜかそこで笑う。
眉間にシワを寄せただけで笑われる理由もわからないが、間近で見せつけられる美形は何度見ても目の保養だ。
でも、よくわからない人だ。それが一番勝ってしまう。
「いえ。素敵な場所だなぁっと思ってたとこです」
「なのに、眉が寄るんだ。千幸ちゃんは変わってるね」
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