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その小野寺とほぼ同時に飲み終え、二杯目を頼む。
おちおち飲んでられないと思ったが、小野寺もそこそこ飲むようなので、変な気を遣わず千幸も飲めそうだ。
そんなことで気が合うなんて思わないが、小野寺がそばにいても気を張りすぎることはなくたまに居心地がいいと思ってしまう。
面倒くさいと思う反面、それでも心底嫌だと思えない不思議でやっぱり変な隣人だ。
二杯目のモヒートのミントとライムの爽やかな香りを感じながら、この一ヶ月で千幸の中にするっと入ってきた小野寺をぼんやり眺める。
グラスを置いた小野寺が、端正な顔を軽く傾げ目をわずかに細めた。
「何考えてるの?」
「小野寺さんのことですよ」
そのまま答えると、片眉をぴくりと上げた小野寺は探るように眼差しを強くして、声をひそめた。
「へえ。他のことではなくて?」
「ええ。なぜ、そこで他のことってなるんですか?」
「いつまでも翔って呼んでくれないから」
「そんなことでですか?」
またそこか、と毎日行われるやり取りに、ボールを投げられポンと軽く打つように返してみれば、相手はすかさず投げてよこす。
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