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プロローグ
まず議題を上げたいと思います。
────大人の笑顔を貼り付けた隣人は、どこか頭が緩いと思います!!
初夏の日差しが差し込むはずの前方に、藤宮千幸は扉を開け固まった状態でそんなことを考えた。
現れる三つ上の隣人の胸元から徐々に視線を上げると、ドアノブに手をかけたまま仕方なく、(もう一度言うが)本当に前方を塞がれているから仕方なく、相手と視線を合わせた。
途端、軽く笑みをかたどっていた口元がにっと嬉しそうに上がっていき、慈しむかのように優しい眼差しで見つめられる。
「千幸ちゃん。おはよう」
「……おはようございます」
腰にくる低音の響く声が己の名前を呼んだので、これも常識の範囲で挨拶を返す。
ご近所の奥様方のみならず小さな女の子からたまに同性まで軒並みノックアウトさせる甘さを伴う爽やかな笑顔を前に、千幸はむしろ蔑むように目を細めた。
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