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友人という名の
今朝も滞りなく千幸とのやりとりを終え、夜の約束まで取り付けた小野寺翔はご機嫌に千幸の姿を眺めていた。
彼女の姿が見えなくなると穏やかに引いていた口元を戻し、背後に立つ二人へと視線を送る。
真顔になり榛色の瞳をすっと細めるだけで、楽しくない、不機嫌だと周囲に告げる。
「前も言ったが、二人の時間を邪魔するな」
それぞれ背が高いので、三人が揃うと迫力がある。
桜田弥生はヒールを履いてだが、目線はみな百七十以上をもつもののそれだ。その中で百八十は優に超えている小野寺は、二人を見下ろした。
迫力ある美形に凄まれたところで、付き合いの長い彼らは微動だにしない。
「邪魔しているつもりじゃない。こっちは仕事だ」
真面目な轟邦彦が黒縁メガネを押し上げて、鞄を見せる。
「私は見学ぅ」
弥生なんかは、さらに煽るような台詞まで吐く始末だ。
手先まで手入れされた爪には透明をベースに、赤、金、紫などの模様が描かれたマニキュアを見せながら、手をくいくいっとさせる弥生に、小野寺は冷めた眼差しを向ける。
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