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メイド達が厨房で口も手も間違いなくフル回転しているのを、マクミリアは確認し、女が多いこの村の中で男どもは小さくなっている現状を思い知った。
秋の収穫が終わると男達は、隣国ハバミシラン帝国の銀鉱山に出稼ぎに行く。女達は厳しい冬を代々村を護ってきたので、強い。
とにかく気が強くて男を全くあてにしない習慣がついている。
「おい、勝手に村を案内してどうするんだ。敵なんだぞ、何か目的があって視界が開けた所をさがしているかもしれないだろう。もっと気をつけろよな」
一瞬、ブルーディが手にしていた泡立て器をとめ、その器を支えていた裁縫係兼機織り監督のミディカが口をつぐんだ。
さすがに言い過ぎたかと、マクミリアが咳払いをした時、ぎゃははーーと、女達が笑い転げた。
「何言ってんのよ。マクミリアは心配性だねえ。この村に何があるってんだい」
「そうそう。自然と山と、あ、あと。気立てが良くて働き者の女達くらいか?」
「言えてるーーきゃははっ」
底抜けに明るい娘達の賑やかな声に誘われるように、厨房にアゼスト国一万人の軍勢を束ねる副官のクシダが入ってきた。
「お嬢さんがた。少しよろしいかな。呼び鈴を鳴らしたのだが聞こえなかったようで」
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