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アゼスト国は、ミューゼナ村の状況をかなり詳細に把握している。
おそらく、この村には内通者がいる。
マクミリアは回廊の反対側から妹のブルーディが呼ぶ声に応えた。
「どうかしたか」
「エンティトナさまのお部屋のカーテンをかけかえようと思うの。手が届かないから手伝ってよっ」
やれやれ。
カーテンひとつ取り替えるのにすら男手が足りないのだ。
こんな村を何のためにアゼスト国が狙ったのか。
あの、有能な副官をつけてまで第五王子ジオナスが軍を率いてきた意味は。
「ねえねえ、ジオナス王子様とエンティトナさまの初夜って今日なの?」
「ばかっ。何を言ってるんだ、まだ婚約しただけだろうがっ。早とちりするなっ」
「えーーっ。なんだあ。でもさあ、けっこうジオナス王子とエンティトナさまってお似合いだと思うんだけどなあ」
「本気で言ってるのか……」
「だって、これまでの縁談はハバミシラン帝国の王族で、六十過ぎのオジサンとかだったじゃないの。それに比べレば、年齢だってちかいし。カッコイイし。良かったなあって私は思うよ」
「ハバミシラン帝国との縁談……たしかにそんな話あったな。お前、良く覚えてたな」
「そりゃあね。わが姫君の縁談は侍女としては気になるもん。だからさあ、初夜ってことになったらいろいろ教えて差し上げたいワケ」
「お前……独身だろ。そんなに教える事が出来るのか?おかしいだろっ」
「やあねえ、兄さんってば固いーーっ。こんな辺境の地じゃあ、恋愛くらいしか楽しみないじゃん」
さっきは、あれほど副官クシダに威圧されていたのに、この村の女どもはとにかく強い。
そして、その中で育ったエンティトナはしぶとさでは村の女達に決してひけは取らない。
「エンティトナさまなら大丈夫だ。そう簡単には陥落されないだろうさ」
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