3.周りが盛り上がるとその気になっちゃうかも。

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3.周りが盛り上がるとその気になっちゃうかも。

エンティトナは、自分の部屋のカーテンをかけかえ、隅々まで掃除をして「ジオナス王子様がいついらっしゃっても万事整いましたっ」そう言い、胸を張ったブルーディの顔が好奇心と興奮で赤くなっているのを見て、睨み付けた。 「まあっ。エンティトナさま。それが初夜を前にしたプリンセスのお顔ですかっ。もっとにこやかに、恥じらいも忘れずにっ」 ブルーディはエンティトナの顔をぐにっとつまんだ。 「だからさあ、この婚約っていわば作戦なんだよね。アゼスト国の軍勢を足止めするための嘘って言うか」 「それはそれ、これはこれです。いいですか、男なんてみんな同じですよ、牧童だって炭鉱夫だって。王子様といえどもです。同じベッドにうら若き乙女が寝ていて、何も出来ない。もとい、しないなんてあり得ません」 「マクミリアの大学の同級生は留学中に婚約者と……その、何も無かったって言ってたよ。それがアゼスト国の習慣だって」 「ここはティトラス王国でございますよ、お忘れですか」 やけに自信たっぷりに威厳まで漂わせてブルーディはエンティトナの手を握った。 「ティトラス国では男女がベッドを共にした瞬間にご夫婦です」 「でも、ブルーディはカレシがいっぱいいるじゃない」 ブルーディはとにかく恋愛の門戸が広い。開けっぱなしとも言える。村人だけではなく、街道を旅する商人とも良い仲になり、そしてまた誰にも恨まれないという得な性格だ。 ミューゼナ村は男達が出稼ぎに行っている期間が長い。その間の恋愛に関しては夫婦も恋人も目をつぶるというのが長年の習慣から生み出されたルールだ。 仮に、夫とは違う男の子どもを生んだとしても、村としては外部の血が入るのは好ましいので問題ナシ。 むしろ、色んな男と恋愛して、沢山の子どもを産んだ女は尊敬される。 出稼ぎ中の夫や恋人がそのまま現地に愛人をつくり帰宅しなかったとしても、恨みっこ無しだ。 これは、ティトラス王国の習慣と言うよりもミューゼナ村独特のルール。おそらく他の地域の人が聞いたら理解に苦しむだろう。 ブルーディの言葉を聞いていると、エンティトナは一瞬だったが、自分がジオナス王子に見初められてプロポーズされた幸せな女のような気がした。そうだったらどんなに素敵だろう。 ジオナス王子の事は、よく知らないけど女達はカッコイイというし、年齢だって近い。エンティトナの手を握って「妻に迎えたい」と言われたときは、本気にしそうだった。
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