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相手の正体はわかった。が、状況は悪くなった。仲間の死に激怒した琥珀団は突撃してきた。すると、タキトの父が一つの扉を指差した。あそこに何かあるらしい。丸腰の親達を先に行かせ、少年少女達は銃撃で踏ん張る。
タキトは頭上の電球に目を止めた。天井を走る電線は簡単なU字金具で固定されている。彼は電線を金具ごと撃った。断線した電線は火花を散らしながら琥珀団の前で振り子のように揺れた。鋼鉄の鎧を着ているから感電は何より恐れる。
全員が内開きの扉をくぐると、カークが扉の下の隙間にバールを深く噛ました。即席のドアストッパーだ。工具を一本失うのは惜しいが、これで時間を稼げる。
通路をしばらく進むと、目の前が開けた。そこには、二本一組の鉄の路が敷かれていた。これは、地下鉄だ!
車両は屋根の無い箱型が連結され、先頭にはL字を横にしたような形状の機関車。天井に架線があるから電気機関車だ。全体像を見ると、フランスのマジノ線地下要塞を彷彿させる。
連結されている箱型車両には座席はない。ジェシカの父を床に座らせ、機関車の運転台にカークの母が立った。タキトの父が機関車の中央にあるレバーを上げて電線にパンダグラフを当てると前照灯が光り、モーターも唸り声をあげる。
全員が貨車に乗りこむのを確認したカークの母がブレーキを解除して、速度ハンドルを回すと動き出した。タキトの父は鉄道はこれ一つだけで、終点からはリフトで地上の近くまで行けると教えてくれた。
安堵したタキトは一人呟く。
「それにしても驚いたよ。こっちの世界には恐竜がいるなんて。しかも琥珀団なんて連中には苦しめられるし、あるはずの無い武器も持ってるから」
「この地下要塞の設備も僕達の世界に近いな。そっくりそのまま真似たみたいだ」
ジェシカの父の傷を見ているマイクも同じ疑問を口にする。途端、タキト達の親の顔が強ばり、空気が変わったのを察した。
タキトの父が重く口を開いた。
「実は・・・、彼らが使っている武器や乗り物は私達が造ったんだ」
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