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タキトはこれまでの旅を振り返った。恐竜や琥珀団と戦い、何度も危険な目にあった。なのに、自分はこの恐竜の世界を嫌ってない。どうしてか?
いつも隣にアイナがいてくれた。自分は、どうするべきか?
答えを見つけたタキトは、ジープの後部台からライフル銃と琥珀団の拳銃、リュックにそれらの弾を詰め込むと時空転送の光の向こうに出た。誰もがその行動に驚いた。特に、アイナは誰よりも驚く。
「タキト、何してるんだ。早く中に戻れ!」
父親が叱るが、タキトは戻ろうとしない。
「ごめん、父さん。オレ、こっちの世界で暮らすよ」
再び驚く一同。
「元の世界に帰れるんだ! 今逃したら二度と戻れないぞ!」
「いいんだ。オレには二十一世紀より、こっちの世界が好きなんだ」
アイナは泣きながら怒る。
「ここは人間よりも強い恐竜がいる世界なのよ。生きていくのは簡単じゃないわ」
「わかってる。だからこそ、頑張って生きていこうって気になるんだ。それに・・・」
タキトはアイナに視線を向ける。
「アイナと一緒にいたい」
アイナは体を小さく振るわせて、また驚いた。
「うまく言えないけど、アイナといると元気が湧いてくるんだ。君となら、この恐竜がいる世界を楽しめるよ」
タキトの言葉にアイナはまた涙を流した。でも、今度は笑みがある。
「本当に、この世界に残ってくれるの?」
「ああ。ずっと一緒にいるよ」
胸が熱くなったアイナは、タキトの背に手をまわして、力強く抱いてくれた。そこにタキトがいる事を確かめるかのように。
二人のその姿にタキトの父は何も言えなくなってしまった。
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