最終話・終わりと始まり

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「あ~あ・・・。どうする、ジェシカ?」 「どうするって、決まってるでしょ」  カークとジェシカもトラックから銃と荷物をまとめ始めた。 「カーク・・・?」 「おい、ジェシカまで・・・」  困惑する自分達の親をよそに、二人は揃って話始める。 「私達もこの世界に残るわ」 「元の世界に戻りたくなんかないよ」 言葉を失う親に代わって、マイクが問う。 「どうして、君達まで?」  ドイツの少年とオーストラリアの少女は互いんに視線を合わせてから答える。 「僕達もどうするか迷ってたんだけど、踏ん切りがつかなかったんだ」 「そうしたら、タキトがここに残るなんて言うから」  大人達は引き留めるか無理矢理でも戻す事が出来たはずなのに、子供達の決心の強さに出来なかった。結果、子供達がこの世界で生きていく為に出来る限りの事をする事にした。  まず、ジープとトラックとジェシカのバイクを白い光の壁の中から出した。この恐竜の世界で車は大事な移動手段になる。だから、故障やパンクした時にこの世界の技術でも可能な修理方法を教えた。持っている可燃液体の精製機も渡した。一台しかないから各自でうまく使うように教えたが、彼らにそんな心配は無用だろう。  持ってきたライフル銃と散弾銃を含め、カークの母は先祖御遺品のモーゼル大型拳銃をお守りとしてケースごと渡す。琥珀団の拳銃とマシンガンは元の世界に持って帰って処分するつもりだったが、数は少ないので思い切って全部渡した。  残っている弾も同様だ。ラプトルみたいな凶暴な恐竜と琥珀団の残党もいる。この危険な世界で生きていくには乏しい量だが、彼らは上手く使ってくれるに違いない。  元の世界の思い出にお菓子やジュース、缶詰やインスタント食品もあるだけ与えた。
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