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「よし!」
本を書きあげたタキトは立ち上がると、大きく腕を上に伸ばした。横で寝ていたトリトも小さな身体を伸ばして大きなあくびをする。傷は完治している。
「お疲れさま」
アイナが水筒に入った麦茶をアルミカップに注いで差し出した。喉を鳴らして飲んでいると、カークとジェシカが来た。二人も書き終えたようだ。
四人が向かうのは、出発の起源ともなったあの洞窟。中に入ると、古代人の絵と共に自分達の親が書いたメッセージがそのままある。
文字を塗らしたタオルで消すと、下向きの矢印を描いた。その下の地面を軽く掘り、クッキー缶みたいな金属箱に三冊の本を入れて蓋をして埋めた。
この本が、この洞窟に存在する時空トンネルを通って元の世界に届けば、次に来る時に消えているだろう。消えていたら、またそこに新しい本を入れる。
自分達がこの世界で元気に暮らしていることを知らせる為に。
短い作業は終わった。タキトがジープの運転席に座り、トリトを抱えたアイナが助手席に乗る。カークがトラック。ジェシカはバイクに。
「じゃあ、またな」
「元気でね」
「たまには錬金の砦に来てくれよ」
「霧の都にも来てね」
いつかまた会う事を約束した彼らは車を走らせながら、手を振って別れる。
タキトとアイナも帰り道を行く。途中で運転を交代したり、日が暮れれば地元の草食恐竜に囲まれてキャンプをし、太陽が昇れば野を駆け、川に架かる橋を渡り、夕方に森を抜けた。
森を抜けると、鉄塔の村の〈東京タワー〉が見えた。
赤い夕陽の中で、共に暮らす恐竜達と一緒に色濃く映る。
この恐竜界の東京タワーは間もなく完成する。
でも、彼らの旅は始まったばかり。そして、この旅に終わりはない。
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