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薄暗い森の中を、アウトドア用の服に身を包み、リュックを背負った三人の大人が走っている。男性が二人と女性が一人。眼鏡をかけている男性のうち一人は日本人。もう一人は欧米系。女性も欧米系だ。
皆息切れしている。服は泥で汚れて、一部が破けている。女性のリュックには鋭利な物で斬られた三本の刻み目が。
彼らは何かに怯えている。恐怖を強調するように、日本人はライフル銃、欧米系の男は回転式拳銃を硬く握り、女性も地図を片手に二連発散弾銃を手放さない。
木の葉の隙間から差し込む光で浮かんだ自分の影に驚いたかと思えば、周囲にくまなく目を走らせ、風のたてる僅かな葉の音にも身をすくませる。
大丈夫だと確認すると、再び走る。
ようやく森を抜けると、赤い岩山が見えてきた。麓にはぽっかりと開く洞窟がある。少し体を休めていると、疲労困憊の三人の顔に微かに光が灯った。
「何とかここまで来れたな」
眼鏡の日本人男性は荒い息で途切れ途切れに言う。
「メッセージが届くといいが・・・」
男性西洋人は水筒の水を一口飲んでから言う。
「運を天に任せましょう」
女性西洋人は湿気た地図をズボンのポケットにしまいながら言う。
三人は洞窟を目指した。中に入る前、眼鏡の男性は自問自答した。
自分達が良かれと思って作り上げたあの機械を使った事で、当の自分達は全く想定してなかった危機に陥っている。
アレを、おもちゃ扱いした代償かもしれない。
自分達、大人のせいで子供達にとんでもない迷惑をかけてしまった。
『後悔先立たず』
そんな言葉があるが、もう遅い。
・・・いや、その失敗は〈今の時代〉でと判断していいのだろうか?
少なくとも、時の数字では〈未来〉という事になるが・・・。
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